マンション大規模修繕で16億円の談合課徴金——公取委が38社処分へ、設計コンサル方式の死角と管理組合・オーナーが今すぐやるべき発注先の見極め方【2026年6月】
「うちのマンションの修繕、本当に適正な金額だったのだろうか」。2026年6月、そう胸がざわついた管理組合の理事長さん、収益物件オーナーさんは、決して少なくないはずです。公正取引委員会が、関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐる大規模な談合を認定し、施工会社と設計コンサルタントの計38社へ排除措置命令を出す方針を固めた——そんな報道が、6月12日に一斉に流れました。課徴金は計約16億円。対象とされた工事は100件以上にのぼると報じられています。
私は東京・関東を中心に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕に長く携わってきました。足場を架ける従来工法だけでなく、ロープアクセス(無足場工法)、そして両者を組み合わせるハイブリッド工法まで、建物ごとに最適な工法を提案することを仕事の柱にしています。だからこそ今回のニュースは、業界の一員として残念に思うと同時に、「この機会に、発注する側が損をしない知識を持ってほしい」という気持ちで受け止めています。
この記事では、今回の談合事件で何が起きたのかを整理したうえで、なぜこうした構造的な問題が繰り返されるのか、そして管理組合の理事長さんや不動産オーナーさんが「次の修繕で同じ轍を踏まない」ために今すぐできる自衛策を、現場の目線でお伝えします。煽るつもりはありません。淡々と、事実と根拠で。
何が起きたのか——公取委が認定した「関東マンション修繕談合」の全体像
38社に排除措置命令、計16億円の課徴金へ
報道各社によると、公正取引委員会は2026年6月11日、関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐり、施工会社と設計コンサルタント計約40社が独占禁止法違反(不当な取引制限=いわゆる談合)にあたると認定する方針を固めました。このうち38社に対して再発防止を求める排除措置命令を出し、あわせて計約16億円の課徴金納付命令を出す方針とされています(毎日新聞・時事通信・日本経済新聞など、2026年6月12日報道)。
排除措置命令の対象とされたのは、報道によれば工事施工会社が36社、設計コンサルタントが2社です。施工会社には長谷工リフォーム、シミズ・ビルライフケア、大京穴吹建設といった、マンション管理や修繕の世界では名の知られた会社の名前が挙がっています。設計コンサルタント側は翔設計、リノシスコーポレーションの2社が対象と報じられました。日本経済新聞は、談合の対象となった工事は100件以上にのぼると伝えています。
念のため申し添えると、本稿執筆時点(2026年6月14日)では、これらはあくまで「公取委が命令を出す方針を固めた」という段階の報道であり、正式な命令の確定や各社の主張は今後の手続きの中で明らかになっていきます。個社を断罪することが目的ではありません。発注する側として、この構造をどう読み解くかが大切です。
談合の手口——「見積もり合わせ」と「入札」の事前調整
報道によれば、各社は遅くとも2021年秋ごろ以降、関東地方のマンションを対象に、外壁・内装・防水といった修繕工事の見積もり合わせや入札の際に、あらかじめ工事価格や受注者を調整していたとされています。
ここで重要なのは、「見積もり合わせ(あいみつ)」という、管理組合にとってごく当たり前の手続きが舞台になっていたという点です。理事会では、複数の施工会社から見積もりを取り、いちばん条件の良い会社を選ぶ——これは健全なプロセスのはずです。ところが、その複数社が裏でつながり、「今回はA社が取る番だから、B社とC社はわざと高く出す」という調整がなされていたとすれば、管理組合がどれだけ真剣に比較検討しても、結果は最初から決まっていたことになります。
つまり、競争が働いているように「見える」状態が人工的に作られていた、というのが談合の本質です。理事の皆さんが手を抜いていたわけではありません。仕組みそのものに、見抜きにくい死角があったのです。
なぜ起きたのか——「設計監理方式(設計コンサルタント方式)」の死角
設計コンサルタント方式とは何か
今回の事件を理解するうえで欠かせないのが、大規模修繕の発注方式の話です。マンションの大規模修繕には、大きく分けて二つの進め方があります。
一つは「設計監理方式(設計コンサルタント方式)」。管理組合がまず設計コンサルタント(設計事務所)と契約し、建物の調査診断・修繕設計・施工会社選定の支援・工事中の監理までを任せる方式です。専門家が組合の代理人として施工会社を厳しくチェックしてくれる、という建前で、近年は主流とされてきました。
もう一つは「責任施工方式」。調査診断から設計、施工までを一つの施工会社にまとめて任せる方式です。窓口が一本化されて分かりやすい反面、第三者のチェックが入りにくいと言われてきました。
設計監理方式は本来、「組合の味方である専門家が、施工会社を監視する」ことで透明性を高める仕組みです。ところが今回問題になったのは、その「組合の味方」であるはずの設計コンサルタント側が、施工会社と通じていた疑いがある、という点です。番犬が泥棒と組んでいたら、いくら立派な番犬小屋を建てても意味がありません。これが「設計監理方式の死角」と呼ばれる理由です。
国交省が9年前から鳴らしていた「3つの不適切事例」
実はこの問題、降って湧いた話ではありません。国土交通省は、平成29年(2017年)1月27日付で「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」を出し、設計コンサルタントと施工会社の癒着やバックマージンに対して、すでに警鐘を鳴らしていました。今からおよそ9年も前のことです。
この通知の中で、国交省は次のような不適切な事例を紹介しています。
第一に、コンサルタントに業務を依頼したのに、実際に調査診断や設計を行っていたのは、そのコンサルタントではなく施工会社の社員だったというケース。第三者のチェックという建前が、最初から崩れている例です。
第二に、設計会社が、施工会社の候補数社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう操作し、その1社が施工会社として内定するように仕向けたというケース。まさに今回の談合報道と重なる構図です。
第三に、コンサルタントが、自社にバックマージン(リベート)を支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様にもとづく発注を誘導したというケース。組合のお金が、知らないうちに余分に抜かれていく構図です。
私が現場で見てきた範囲でも、「コンサルさんに任せていたのに、後から相見積もりを取ったら数千万円も差が出た」という相談は、決して珍しくありませんでした。国がここまで具体的に注意喚起していたにもかかわらず、構造が温存され、今回の大規模な摘発につながった——そう捉えるのが自然だと思います。
管理組合・オーナーが受ける「見えない損失」
談合や不適切コンサルの怖いところは、被害が「見えにくい」ことです。詐欺のように一目で分かる被害ではなく、「相場より少し高い金額を、納得して払ってしまう」という形で表れます。具体的には、次のような損失が考えられます。
割高な工事費とバックマージン
談合によって競争が働かないと、工事価格は下がりません。本来なら相見積もりで削れたはずの金額が、そのまま管理組合の負担になります。さらにバックマージンが上乗せされていれば、その分は純粋に「組合の修繕積立金が、工事と関係のない誰かの懐に流れた」ことになります。
修繕積立金は、区分所有者一人ひとりが毎月コツコツ積み立てた、いわば共有の貯金です。近年は資材費や人件費の高騰で修繕費そのものが上がり、積立金不足に悩む組合も増えています。その貴重な原資が、不透明な仕組みで目減りしていたとすれば、これほど悔しいことはありません。
過剰な工事項目・仕様という「水増し」
もう一つ見落とされがちなのが、「やらなくてもよい工事まで盛り込まれる」というタイプの損失です。国交省の指摘にもあったとおり、過剰な工事項目や過剰な仕様の設定によって、工事費が膨らむことがあります。
たとえば、まだ十分に機能している防水層をすべて撤去してやり直す、本来は部分補修で足りる外壁を全面的に塗り替える、といった具合です。専門知識のない管理組合からすれば、「専門家がそう言うのだから必要なのだろう」と受け入れてしまいがちです。けれども、その判断をする専門家自身が利益相反の立場にいたとしたら——。ここに、設計監理方式の根深い難しさがあります。
今すぐできる、5つの自衛策
では、管理組合の理事長さんや収益物件のオーナーさんは、次の修繕で同じ轍を踏まないために何をすればよいのでしょうか。専門家でなくても実践できる、現実的な5つの自衛策をお伝えします。
1. 設計コンサルタントと施工会社の「資本・人的関係」を確認する。 契約前に、コンサルタントと候補施工会社の間に資本関係や役員の兼任、過去の継続的な取引がないかを確認しましょう。「御社と、推薦いただく施工会社さんとの関係を教えてください」と率直に尋ねるだけでも、相手の反応から多くが分かります。
2. コンサルタントへの報酬体系を明確にする。 設計監理料を、工事費に対する%ではなく定額(あるいは業務内容に応じた積算)で契約すると、「工事費が高いほどコンサルの報酬も増える」という利益相反が起きにくくなります。バックマージンの有無も、契約書で明示的に否定してもらいましょう。
3. 相見積もりは「組合主導」で、候補社も自分たちで探す。 コンサルタントが用意した候補社だけで相見積もりを取ると、その時点で競争が閉じている可能性があります。組合として独自に1〜2社を候補に加える、あるいはまったく別ルートから見積もりを取ってみる。これだけで、提示金額の妥当性を客観的に検証できます。
4. 国や自治体の相談窓口・指標を活用する。 国土交通省は、管理組合が適正な見積りかどうかを検討する際の指標となるよう、マンション大規模修繕工事に関する実態調査を実施・公表しています。工事費の目安を知るだけでも、「明らかに高い見積もり」に気づけます。各自治体もマンション管理の相談窓口を設けています。
5. 「発注方式そのもの」を比較検討する。 設計監理方式が唯一の正解ではありません。後述する責任施工方式や、複数の工法を扱える施工会社への直接相談など、選択肢を広げて比較することが、結果的に最も強い防衛策になります。
見積書のどこを見ればいいか——理事長が押さえる5つのチェックポイント
「専門用語ばかりで、見積書のどこを見ればいいのか分からない」。これは、私が管理組合の理事長さんから最もよくいただく相談です。建築の素人であっても、次の5点を押さえるだけで、見積もりの不自然さにはかなり気づけるようになります。
第一に、仮設費(足場代)の内訳です。 大規模修繕の見積もりの中で、足場をはじめとする仮設費は大きな割合を占めます。ここが「仮設工事 一式」とだけ書かれていたら要注意です。足場の面積(㎡)、単価、設置期間が明示されているかを確認してください。ロープアクセスやハイブリッド工法という選択肢を検討すれば、この仮設費そのものを見直せる余地が生まれます。
第二に、「一式」表記の多さです。 見積書に「一式」が並んでいると、何にいくらかかっているのかが分かりません。本来は、項目ごとに数量と単価が積み上げられているのが健全な見積もりです。「一式」が多い見積もりは、後から金額を動かしやすく、比較もしにくいため、内訳の明示を求めましょう。
第三に、数量の根拠(数量拾い)です。 外壁補修やタイルの張り替えは、「想定数量」で見積もられることが多い項目です。実際の劣化範囲を調査したうえでの数量なのか、それとも経験則で多めに積んでいるのか。この差が、過剰な工事項目につながります。調査診断の報告書と見積もりの数量が整合しているかを照らし合わせてください。
第四に、予備費の割合です。 工事中に追加で見つかる劣化に備える予備費は必要ですが、過大に計上されていると、使われなかった分がそのまま費用になりかねません。予備費が総額の一定割合を大きく超える場合は、その根拠を確認しましょう。
第五に、諸経費率です。 現場管理費や一般管理費などの諸経費は、工事の規模に応じてある程度の幅に収まるのが通常です。複数社の見積もりを並べたとき、諸経費率が極端に高い会社があれば、その理由を尋ねる価値があります。
これらは、専門家でなくても「質問できる」ポイントです。そして、誠実な施工会社やコンサルタントであれば、こうした質問に丁寧に答えてくれます。逆に、質問をはぐらかしたり、「お任せください」の一点張りだったりする相手は、慎重に見極めたほうがよいでしょう。
修繕積立金との関係——「高い工事」は将来の積立計画も狂わせる
談合や不適切コンサルによる割高な工事の影響は、その一回の工事費だけにとどまりません。マンションの修繕は、12年前後の周期で繰り返される長期戦です。一度の工事で想定より多く積立金を使ってしまえば、次回・次々回の修繕に向けた資金計画が狂い、最悪の場合は一時金の徴収や借入れが必要になります。
国土交通省は、長期修繕計画と修繕積立金のあり方についてガイドラインを示し、計画的な積立てを促してきました。近年は資材費・人件費の高騰で修繕単価そのものが上昇しており、積立金が不足する組合も少なくありません。そうした厳しい環境だからこそ、「一回の工事で適正な金額に抑える」ことの重みが増しています。
私は、大規模修繕を「資産価値を守るための投資」だと考えています。投資である以上、同じ効果ならコストは低いほうがよく、同じコストなら効果は高いほうがよい。談合によって競争が失われると、この当たり前の経済原理が働かなくなります。発注する側が知識を持ち、複数の選択肢を比較することは、目先の一工事だけでなく、マンションの数十年先の財務を守ることにつながるのです。
収益物件のオーナーさんにとっては、この問題はより直接的に利回りに響きます。修繕費が割高になれば、その分だけ実質利回りは下がります。建物の資産価値を維持しながら、修繕コストを適正化する——その両立こそが、長期で収益を最大化する王道だと、私は現場で繰り返し実感してきました。
<明誠のサービス紹介>工法の選択肢を増やすという発想——足場・ロープアクセス・ハイブリッド
ここからは、私たち株式会社明誠が大規模修繕で大切にしている考え方を、サービス紹介としてお伝えします。利益相反を避けるため、見出しで明確に区切っておきます。読み飛ばしていただいてもかまいません。
今回の談合事件の根っこには、「管理組合が、工事の中身や価格の妥当性を自分で判断しにくい」という情報の非対称性があります。私たちが解決策の一つとして提案しているのが、工法の選択肢を増やし、コスト構造を見える化するというアプローチです。
3つの工法を、建物ごとに使い分ける
大規模修繕というと、多くの方が「建物全体に足場を架ける」イメージを持たれます。ですが、工法は一つではありません。
| 工法 | 特徴 | 向いている建物 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場による施工。広い面を一度に施工でき、複雑な形状にも対応 | 中低層、形状が複雑な物件 |
| ロープアクセス工法(無足場) | 産業用ロープで職人が昇降して施工。足場の架設費が不要で、工期短縮・居住者の生活影響の最小化につながる | 高層、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件 |
| ハイブリッド工法 | 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け、総合的にコストを最適化 | 大規模・複雑で、総合コスト最適化が必要な物件 |
足場を架けるか架けないかで、仮設費(足場代)は大きく変わります。一般に足場の架設・解体・賃料は工事費の中でも大きな割合を占めるため、ロープアクセスを適切に組み合わせると、その部分のコスト構造が分かりやすくなります。「なぜこの金額なのか」を発注者が理解しやすくなる——これは、不透明な見積もりに対する一つの抑止力になります。
私たち明誠は、この3つの工法をすべて自社で扱い、建物の高さ・形状・劣化状況・居住者の事情に応じて「この建物にとってのベスト」を提案できる、日本でも数少ない会社です。一つの工法しか持たない会社は、どうしても自社の得意な工法に話を寄せがちです。複数の選択肢を同じテーブルに並べて比較できることが、発注者の納得につながると考えています。
なぜ「工法の選択肢」が談合に強いのか
談合が成立するのは、限られたプレイヤーが同じ土俵で価格を調整できるからです。ところが、足場工法しか想定していなかった案件に「ロープアクセスならこの部分はこの費用」という別の物差しが入ると、価格の妥当性を測る基準が一つ増えます。物差しが増えるほど、不当に高い金額は目立ちます。工法の多様性は、結果として価格の透明性を高めるのです。
加えて、私たちはロープアクセス工事として日本で初めてフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する体制を築いています。専門職が直接施工に関わることで、中間マージンを抑え、高品質と低価格の両立を目指しています。
発注方式の選び方——設計監理方式と責任施工方式、どちらが正解か
「では、設計監理方式はやめて責任施工方式にすればいいのか」と問われると、答えは単純ではありません。どちらにも長所と短所があります。
設計監理方式は、信頼できる第三者のコンサルタントに当たれば、施工会社を厳しくチェックしてもらえる強みがあります。問題は、その「信頼できる第三者」をどう見極めるかです。今回の事件は、方式そのものが悪いというより、運用における利益相反のチェックが甘かった点に本質があると私は見ています。
責任施工方式は、窓口が一本化されて話が早く、設計から施工まで一貫した責任を負ってもらえる安心感があります。一方で、第三者の目が入りにくいため、施工会社の誠実さに大きく依存します。だからこそ、責任施工方式を選ぶ場合は、施工会社の実績・財務の健全性・工法の説明の丁寧さを、組合側がしっかり見極める必要があります。
私からの提案は、「方式を先に決めない」ことです。まずは複数の施工会社・コンサルタントに会い、見積もりと説明の中身を比較したうえで、自分たちのマンションに合った進め方を選ぶ。そのプロセス自体が、最良の自衛策になります。手間はかかりますが、何千万円、ときに億単位の工事です。手間をかける価値は十分にあります。
現場で見た「油断」——「うちは大丈夫」と思っていた組合ほど危ない
最後に、私自身が現場で見聞きしてきた話を、個人や物件が特定されない範囲でお伝えします。談合や不適切コンサルの被害に遭う組合には、いくつか共通する「油断」があると感じています。
一つめは、「前回と同じところに頼めば安心」という油断です。あるご相談では、十数年前の修繕を担当した会社にそのまま二回目もお願いしようとしていました。継続は悪いことではありません。けれども、相見積もりを一度も取らずに発注を続けると、価格が適正かどうかを検証する機会が永遠に訪れません。私たちが参考見積もりを出したところ、工法の組み合わせを見直すだけで仮設費の構成が大きく変わり、理事会の皆さんが「比べてみて初めて分かった」とおっしゃっていたのが印象的でした。
二つめは、「専門家に任せておけば間違いない」という油断です。これは決して理事の皆さんを責める話ではありません。本業を持ちながら無償で組合運営を担う理事の方々が、建築の専門家を信頼するのはごく自然なことです。だからこそ、その信頼を裏切る一部の事業者の存在が、いっそう罪深いのだと思います。専門家を信頼することと、専門家を一切チェックしないことは、別物です。
三つめは、「急いで決めなければ」という油断です。総会の日程や劣化の進行を理由に、十分な比較検討をしないまま発注へ進んでしまうケースです。確かに、雨漏りや外壁の浮きなど、安全に関わる劣化は急ぐべきです。けれども、緊急対応と本工事の発注は切り分けられます。まずは応急処置で安全を確保し、本工事はじっくり比較する——この二段構えが、結果的に組合を守ります。
私は職人の世界から叩き上げてきた人間です。ロープ一本で外壁にぶら下がり、タイルの一枚一枚を打診しながら、「この建物をあと何十年もたせるか」を考えてきました。だからこそ、発注者の大切なお金が不透明な仕組みで失われるのを見ると、本当に悔しい。今回のニュースを、業界が襟を正す機会にしなければならないと、強く思っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 今回の談合に関わった会社に発注した管理組合は、お金を取り戻せますか。
A. 個別の事案については、弁護士など専門家への相談が必要です。一般論として、独占禁止法違反が確定した場合、損害賠償請求の可能性が論じられることはありますが、立証や手続きのハードルは高いのが実情です。本記事は法的助言ではありませんので、具体的な対応は専門家にご確認ください。
Q. うちのマンションの過去の修繕が適正だったか、今から確認できますか。
A. 当時の見積書・契約書・工事仕様書が残っていれば、第三者の施工会社やコンサルタントにセカンドオピニオンを求めることができます。次回の修繕計画を立てる良い機会にもなります。
Q. ロープアクセスにすれば必ず安くなりますか。
A. いいえ。建物の形状や劣化状況によっては、足場工法のほうが適切で結果的に経済的な場合もあります。大切なのは「必ず安い工法」を探すことではなく、「この建物にとって最適な工法」を複数の選択肢の中から選ぶことです。
Q. 設計コンサルタントを使うこと自体が悪いのですか。
A. そうではありません。誠実なコンサルタントは、管理組合にとって心強い味方です。問題は利益相反のある一部の事業者です。報酬体系の透明化と、施工会社との関係の確認で、多くのリスクは下げられます。
まとめ——「見えない損失」を、知識で防ぐ
今回の公取委による談合認定は、マンション修繕業界にとって厳しいニュースです。けれども、発注する側にとっては「自分たちのお金の守り方」を学び直す機会でもあります。
ポイントを振り返ります。談合は、競争が働いているように見える状態を人工的に作る行為であり、理事会が手を抜いていたから起きたものではありません。背景には設計監理方式の利益相反という構造的な死角があり、国は9年前から警鐘を鳴らしていました。被害は割高な工事費やバックマージン、過剰な工事項目という「見えない損失」として表れます。そして自衛策は、コンサルと施工会社の関係確認、報酬体系の透明化、組合主導の相見積もり、公的指標の活用、そして発注方式と工法の選択肢を広げること——この5つです。
私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を建物ごとに提案し、コスト構造を見える化することで、発注者の皆さまが「納得して選べる」修繕を目指しています。大規模修繕は、マンションやビルの資産価値を守り、入居者・利用者の暮らしを支える大切な投資です。その一円一円が、正しく建物のために使われる——そんな当たり前を、業界の一員として取り戻していきたいと、今回のニュースを見て改めて思いました。
次の修繕で迷われたときは、工法の選択肢から一緒に考えてみませんか。お問い合わせをお待ちしています。
工法ごとの考え方や費用構造については、株式会社明誠の公式サイトで、足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・ハイブリッド工法それぞれの特徴と、建物に応じた選び方をご案内しています。具体的なご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
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出典
- マンション修繕談合、38社に排除命令へ 計16億円課徴金方針(毎日新聞/Yahoo!ニュース、2026年6月12日):https://news.yahoo.co.jp/articles/5ea9e87a5718b6e476fa0be0807558072a4e8a37
- マンション修繕談合、30社超に排除命令へ 100件以上が対象(日本経済新聞、2026年6月):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD034M00T00C26A6000000/
- 公取委、マンション修繕工事で談合認定 三十数社に課徴金16億円命令へ(時事ドットコム、2026年6月12日):https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061200061&g=eco
- 公正取引委員会(一次情報トップ):https://www.jftc.go.jp/
- 国土交通省「住宅:マンション管理」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_hous


