
2026年9月22日 更新
足立区の千住地域で、築31年の分譲マンションの理事長さまから「去年の大雨で1階の集合ポスト脇から水が入った。荒川は決壊していないのに、なぜ」とご相談をいただいたことがあります。現地を見ると、答えは川ではありませんでした。前面道路の雨水桝が呑みきれず、道路上の水位が上がって、わずか十数センチの段差を越えて敷地に流れ込んでいた。荒川の堤防は無傷です。それでも建物は浸かりました。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
足立区という区は、私の実感では23区でもっとも「水のメニューが揃っている区」です。荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川(新芝川)という6つの大きな川に加えて、毛長川・伝右川・垳川といった中小河川、そして内水氾濫、さらに高潮まで、区が公表しているハザードマップに全部載っています。ここまで揃っている区は多くありません。
だからといって、全部を等しく心配する必要はありません。むしろ逆です。種類が多いからこそ、大規模修繕で先に潰すべき入口は絞り込める。今日はそれを、足立区が公表している最新の一次情報から逆算して整理します。
結論:足立区で先に手を打つべきは「地上1.5mまでの水の入口」です
先に結論から申し上げます。足立区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。地盤面から高さ1.5mまでの範囲に、水の入口がいくつあるかです。
理由は3つあります。
1つ目。足立区の水害ハザードマップは、洪水(6河川)・中小河川・内水氾濫・高潮の4系統で構成されていますが、このうち発生頻度がいちばん高いのは内水氾濫です。川があふれるには上流域も含めた大雨が要りますが、内水氾濫は区内に強い雨が降るだけで起きます。
2つ目。足立区は土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域の指定が、現在のところ区内にありません(出典:足立区「足立区洪水・内水・高潮ハザードマップ(令和4年4月改訂)」/更新日 2026年9月18日)。斜面や擁壁の対策に予算を割かなくてよい、ということです。そのぶんを水に回せます。
3つ目。区の止水板設置工事助成が、止水板そのものだけでなく「内外壁の防水工事」「土間コンクリート打設工事」まで関連工事として対象にしているからです。これは大規模修繕の工事項目とほぼ重なります。後ほど詳しく書きますが、ここを知らずに工事の順番を決めてしまうと、使えたはずの助成を取り逃がします。
つまり足立区は、「心配する対象が多い区」ではなく「やることがはっきりしている区」です。
足立区のハザードを1枚で読む(令和8年10月発行版の変更点つき)
区が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。
| 災害種別 | 足立区の該当 | 想定・該当範囲 |
|---|---|---|
| 洪水(大河川) | あり | 荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川(新芝川)の6河川 |
| 中小河川の氾濫 | あり | 毛長川・伝右川・垳川 |
| 内水氾濫(雨水出水) | あり | 令和8年3月に東京都が指定した雨水出水浸水想定区域が根拠 |
| 高潮 | あり | 東京都の高潮浸水想定区域図(令和6年12月) |
| 土砂災害 | なし | 区内に指定なし |
| 津波 | なし | 区内に指定なし |
そして、ここが今月のニュースです。区のハザードマップページには、令和8年10月発行版の更新情報として次の2点が明記されています(更新日 2026年9月18日)。
- 「内水氾濫」と「中小河川(毛長川、伝右川、垳川)の氾濫」の最大浸水深を分離したハザードマップに更新
- 「内水氾濫」のハザードマップは、令和8年3月に東京都が水防法第14条の2の規定により指定した「雨水出水浸水想定区域」を基に作成
この「分離」が、実務では効きます。これまで内水と中小河川がひとまとめだったものが別々の図になったということは、自分の敷地で効いているのが下水道の限界なのか、それとも近くの中小河川なのかが、地図上で切り分けられるようになったということです。対策の打ち手が変わります。下水道側なら敷地内の排水と止水、中小河川側なら浸水深そのものへの備え。同じ「水が来る」でも、直す場所が違います。
内水氾濫の想定雨量も公表されています。時間最大雨量153mm・24時間総雨量690mm。区は「国が定めた科学的な算定ルールと過去の実際の豪雨実績を設定基準の根拠としている」と説明しています。
正直に申し上げます。時間153mmという雨を前提に排水計画が組まれている既存マンションは、まずありません。築30年前後の物件であれば、設計当時の想定は時間50mm前後です。だからこの数字は「うちの建物の排水は足りない」と嘆くための数字ではなく、足りない前提で、どこから水が入るかを1つずつ塞いでいくための数字だと考えています。
足立区の浸水履歴は、平成6年度以降が公開されています
想定の話をすると、総会では必ず「そんな雨は降らない」という声が出ます。私がそういうときに使うのは、想定ではなく実績の資料です。
足立区は、平成6年度以降に区内で発生した道路冠水・床下浸水・床上浸水の被害箇所を「水害区域図(浸水履歴)」としてPDFで公開しています。平成21年度以降の分は令和8年8月に更新されたばかりです(出典:足立区「足立区水害区域図(浸水履歴)について(平成6年度から)」/更新日 2026年8月26日)。
この資料には、なぜ平成6年度からなのかという説明も添えられています。足立区を含む23区の下水道普及率が平成6年度に概ね100%となり、その前後で被害状況が大きく異なるため、というのが区の説明です。裏を返せば、平成6年度以降に冠水の記録が残っている場所は、下水道が概ね整備された後でもなお水が出た場所だということになります。これは重い情報です。
注意点も区が明記しています。道路冠水は区が現地調査で確認した箇所が対象、床下・床上浸水はり災証明書を交付した件数、そして図はおおよその範囲を示すもので実際の浸水範囲とは異なる場合がある、と。あくまで参考として読む資料です。それでも、理事会の議案を通す材料としては、想定の地図より強いと私は思っています。
まず、ご自身のマンションの所在地をこのPDFで探してみてください。費用はかかりません。
足立区の地域特性と、漏水事故の出方
足立区は東京東部低地帯に位置し、墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区とともに「江東5区」を構成しています。平成30年8月には5区で「江東5区大規模水害広域避難計画」と「江東5区大規模水害ハザードマップ」が策定されました(出典:足立区「江東5区広域避難推進協議会の検討結果について」)。大規模水害時には、標高が高い地域へ避難する広域避難が必要になる地域だという前提に立った計画です。
この「広域避難が前提」という点が、マンションの修繕計画に効いてきます。広域避難が想定されるということは、在宅避難の期間が長くなる可能性があるということでもあるからです。区のハザードマップには浸水継続時間の図も収録されていて、荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川それぞれについて公表されています(内水氾濫の浸水継続時間を示す図は公表されていません)。
建物のタイプ別に、私が現場で見ている傾向を書いておきます。
千住・北千住周辺の中層ストック
商業地と住宅が混在し、1階が店舗のマンションが多いエリアです。1階店舗の出入口、シャッター下端、換気口の高さが効いてきます。ここは外壁より先に、地上1.5mまでを見ます。
中川・綾瀬川沿いの低地
洪水と内水の両方が絡みます。機械式駐車場のピット、受変電設備、給水ポンプの設置高さが最優先。設備が止まると、浸水が引いた後も生活が戻りません。
西新井・竹の塚周辺の団地系・大規模ストック
築40年前後で、エキスパンションジョイント(建物のつなぎ目に設ける隙間)のシーリングが切れているケースを何度も見ました。ここは雨のたびに水が入るのに、カバーの下なので外からは見えません。
舎人・入谷など区北部
毛長川が近い地域が含まれます。令和8年10月発行版で中小河川の浸水深が分離されたことで、ここは読みやすくなりました。
荒川・隅田川沿いの高層・タワー型
高さがあるぶん浸水そのものより、風雨の吹き上げによる上層階のサッシまわりの漏水と、下層階の設備被害という二層構造で考えます。
大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ
私が足立区の物件で調査に入るとき、優先順位をつけて見る7か所です。
- 1階まわりの基礎打継ぎ・配管貫通部 — 内水氾濫が主役の区では、ここが最優先になる物件があります。地上から低い位置の貫通部は、シーリングが痩せているだけで水が入ります
- 敷地の雨水桝と前面道路との高低差 — 道路側の水位が上がったときに、敷地がどこから受けるかを実測します。費用はかかりません
- 屋上防水の立上りと押えコンクリートの打継ぎ — 平場より先に立上りです。排水が追いつかず水位が上がったときに越えるのはここです
- ルーフドレンとストレーナー — 時間153mmという想定に対して、詰まったドレンは致命的です
- バルコニー排水口と防水層の端部 — 各戸の私物で塞がれていることが多い場所です。総会で一斉点検をかけるのが早いです
- 外壁シーリングの打継ぎ目地とサッシまわりの取り合い — 打替えの目安はおおむね10〜15年。外壁のひび割れを疑って塗り直しても止まらない漏水の、実際の入口はここであることが多いです
- エキスパンションジョイント — 団地型・棟続き型で要注意。外から見えないぶん、放置されやすい場所です
金額の目安も書いておきます。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状況で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。
| 工種 | 単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 打診調査(外壁タイル・モルタル) | 250〜500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 30戸規模マンションの大規模修繕総額 | 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%) |
仮設足場が総額の15〜25%というのは、言い換えれば工事費の5分の1前後が「作業員が登るための費用」だということです。ここに手を入れられるかどうかが、同じ予算で直せる範囲を決めます。
足立区で使える止水板設置工事助成(令和8年度)
足立区の防災系の助成で、大規模修繕といちばん相性がよいのがこれです。条件を令和8年度の一次情報で確認しました(出典:足立区「止水板設置工事助成のご案内」/更新日 2026年4月1日)。
| 項目 | 令和8年度の内容 |
|---|---|
| 助成額 | 建物1棟につき上限50万円(対象工事費(税抜)の2分の1) |
| 対象者 | 区内に住民登録のある個人、区内に本店・支店登記のある法人、マンション管理組合、民間の要配慮者利用施設の所有者・管理者 |
| 申請受付期間 | 令和8年4月1日(水)〜令和9年1月29日(金) |
| 工事完了期限 | 令和9年2月26日(金)までに工事完了+区へ工事完了届の提出 |
| 対象工事(1) | 止水板設置工事(金属等の浸水に耐えうる材質/取り外しまたは移動が可能/繰り返し使用が可能) |
| 対象工事(2) | 関連工事:内外壁の防水工事、土間コンクリート打設工事、その他必要な工事 |
令和8年4月からの変更点は、助成対象者に民間の要配慮者利用施設(水防法第15条第1項第4号ロに規定する社会福祉施設、学校、医療施設など)の所有者・管理者が追加されたことです。区が明示的に拡充したのはこの点です。
管理組合の視点で、私が重要だと考えているのは対象工事(2)の関連工事です。止水板の設置と一体的に行う内外壁の防水工事・土間コンクリート打設工事が助成対象になる。これは、大規模修繕の工事項目とそのまま重なります。つまり「止水板だけ別発注」ではなく、大規模修繕の一部として止水板と周辺の防水を同時に設計すれば、その部分が助成の射程に入るということです。
ただし、外せない注意事項があります。区が対象外として明記しているのは次のケースです。
- 止水板の購入のみの場合(設置工事を伴わないと対象外)
- 扉として併用する場合(止水板は浸水防止の用途に限る)
- 周辺地盤より掘削して設けた地下室(半地下構造を含む)がある建物への設置(※令和5年3月以前に建築確認済証が交付された建物は除く)
- 国・東京都・足立区から本制度以外で止水板設置に伴う助成を受けている場合
- 申請者が住民税を滞納している場合
- 売買目的で所有する建物への設置
- 区の交付決定前に工事着手した場合
最後の1つが、実務でいちばん事故が起きやすい項目です。大規模修繕は総会決議のあと着工までが慌ただしくなります。そこで止水板部分だけ先に手をつけてしまうと、助成が受けられません。工程表を引く段階で、区の交付決定のタイミングを1本の線として書き込んでおく。これだけで防げます。私が管理組合さまにご提案するときは、必ず工程表に区の審査期間を入れています。
なお、申請状況により受付期間より早く終了する場合がある旨も区が注記しています。年明けの駆け込みは避けたほうが安全です。
足立区の耐震助成も、令和9年3月まで拡充が延長されています
水の話と並べて、地震側も押さえておきます。足立区は非木造(鉄筋コンクリート造・鉄骨造など)の住宅・建築物への耐震助成について、助成金の拡充期間を令和9年3月まで延長しています(出典:足立区「非木造住宅・建築物の耐震化に助成を行っています」/更新日 2026年4月2日)。分譲・賃貸の区別は問われません。
| 助成の種類 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 耐震診断(共同住宅) | 診断費用の5割 | 上限500万円(ただし住宅戸数×10万円の額以下) |
| 耐震改修計画の策定(共同住宅・特定建築物/非木造) | 策定費用の5割 | 上限300万円 |
| 耐震改修工事等(共同住宅) | 工事費用の5割 | 上限3,000万円 |
| 除却工事(分譲マンション) | 除却工事費用の5割 | 上限2,000万円 |
対象は昭和56年5月までに建築されたもので、すべて事前申請です。契約後の申請は対象外になります。ここも止水板助成と同じで、順番を間違えると使えません。
もう1つ、費用のかからない入口として建築物等耐震アドバイザー派遣制度があります。資格を持つ建築士が派遣され、建物や道路に面する高さ1.2mを超えるブロック塀などの調査・相談・改善提案に応じる制度で、オンライン申請にも対応しています(出典:足立区「建築物等耐震アドバイザー派遣制度」/更新日 2026年9月1日)。理事会として最初の一歩を踏み出すには、ちょうどよい制度だと思います。
防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります
内水氾濫が主役の区では、修繕の優先度は劣化の度合いではなく設置されている高さで決まります。私が現地で確認する順番です。
| 設備 | 確認すること | 止まると何が起きるか |
|---|---|---|
| 受変電設備・キュービクル | 地盤面からの設置高さ、周囲の止水 | 全館停電。エレベーター・給水ポンプ・照明が同時に止まります |
| 給水ポンプ・受水槽まわり | ポンプ室の床レベル、排水経路 | 断水。高置水槽式でも揚水が止まれば同じです |
| エレベーターピット | ピット内の湧水・排水ポンプの有無 | 復旧に時間がかかり、高層階の高齢の居住者に直接影響します |
| 機械式駐車場のピット | 排水ポンプの能力と非常電源 | 車両の水没。管理組合の賠償問題に発展することがあります |
| 非常用発電機・消防設備 | 設置高さと燃料系統 | 停電時の最後の砦が先に沈みます |
国土交通省も「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公開しています。新築向けの内容が中心ですが、既存建物でも「設置高さを上げる」「防水区画で囲う」という2つの考え方は流用できます。大規模修繕のタイミングは、この見直しを入れる数少ない機会です。
これは費用ゼロでできる確認です。次の理事会で、メジャーを1本持って地下や設備室を回ってみてください。設置高さを実測してメモするだけで、優先順位がはっきりします。
漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由
漏水対応で私がいちばん悔しい思いをするのは、「原因が分かっているのに、足場を組むまで直せない」という状況です。台風のあとにご連絡をいただいて、調査・見積・総会・足場架設で1か月半。そのあいだに次の雨が来ます。
ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下して作業する無足場工法)なら、足場の架設が要りません。私の実務感覚では、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。部分補修であれば、その日のうちに止水まで持っていけることもあります。
費用の差も具体的に書きます。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場は約168万円、同じ範囲をロープアクセスで施工した場合は約59万円。差額は約109万円です。緊急の部分補修であれば、そもそも足場を組まない判断ができるので、差はさらに大きくなります。
足立区のように、1階が店舗のマンションや、隣地との離隔が小さい物件が多いエリアでは、この「足場を組まずに済む」という選択肢の価値が上がります。足場を組むと1階店舗の視認性が落ち、テナントの売上に影響します。ロープアクセスなら、その期間そのものが発生しません。
技術的な裏付けについては、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで、器具構成・二重確保・作業手順まで公開しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらのほうが情報が濃いはずです。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そしてロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を前提にした体制で、私は日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。安全の話を先にするのは、緊急対応こそ段取りが雑になりがちだからです。
工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水対応の進め方はマンション・ビルの漏水調査と補修、費用の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
足立区での3つの工法の使い分け
明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから建物特性に応じてご提案しています。足立区の物件での使い分けの目安を書いておきます。
| 工法 | 向いている足立区の物件 | 理由 |
|---|---|---|
| 通常足場 | 全面打診・全面改修が必要な中層ストック、外壁一斉やり替え | 全面作業では足場のほうが効率がよい場面があります |
| ロープアクセス | 1階店舗があり足場で商売を止められない物件、隣地との離隔が小さい物件、緊急の部分補修 | 架設期間ゼロ、敷地占有なし |
| ハイブリッド | 大規模・複雑形状の団地型、道路側は足場・中庭側はロープなど | 部位ごとに最適化して総額を下げられます |
「うちはどれですか」というご質問には、図面と現地を見ないと答えられません。ただ、3つの選択肢を持っている会社に相談すると、工事の順番そのものを組み替えられるという点は申し上げておきたいと思います。順番を変えるだけで、止水板助成の申請時期に間に合わせられることもあります。
よくあるご質問
Q. 足立区のハザードマップは、いつのものを見ればよいですか?
A. 現行は令和4年4月改訂版で、ページは2026年9月18日に更新されています。令和8年10月発行版では、内水氾濫と中小河川(毛長川・伝右川・垳川)の最大浸水深が分離され、内水側は令和8年3月に東京都が指定した雨水出水浸水想定区域が根拠になりました。電子ブック版と足立区防災アプリでも閲覧できます。
Q. 止水板の助成は、マンション管理組合でも申請できますか?
A. できます。令和8年度の助成対象者に「マンション管理組合」が明記されています。建物1棟につき上限50万円、対象工事費(税抜)の2分の1です。申請受付は令和8年4月1日から令和9年1月29日まで、工事完了と完了届の提出は令和9年2月26日までが期限です。
Q. 大規模修繕の防水工事も、止水板助成の対象になりますか?
A. 止水板設置工事と一体的に行う内外壁の防水工事・土間コンクリート打設工事は、関連工事として対象と区が明記しています。ただし止水板の購入のみは対象外で、区の交付決定前に工事着手した場合も対象外です。大規模修繕の工程を組む段階で、区の審査期間を織り込んでおく必要があります。
Q. 地下駐車場のあるマンションでも助成は使えますか?
A. ここは注意が必要です。周辺地盤より掘削して設けた地下室(半地下構造を含む)がある建物への止水板設置は対象外とされています。ただし令和5年3月以前に建築確認済証が交付された建物は除くとされていますので、築年数によって扱いが変わります。図面を用意したうえで、都市建設部都市建設課へ個別にご確認ください。
Q. 耐震診断の助成は、うちのマンションでも使えますか?
A. 昭和56年5月までに建築された非木造の共同住宅であれば対象です。診断費用の5割・上限500万円(住宅戸数×10万円の額以下)で、拡充期間は令和9年3月まで延長されています。すべて事前申請で、契約後の申請は対象外になりますのでご注意ください。
Q. 時間153mmの雨に、既存のマンションで備えられますか?
A. 排水能力そのものを153mm対応にすることは、既存建物では現実的ではありません。私がご提案しているのは、入口を減らすアプローチです。ドレンとストレーナーの清掃、バルコニー排水口の一斉点検、1階まわりの貫通部シーリング、敷地の雨水桝の清掃。この4つは費用が小さく、効果が出やすい項目です。
Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればよいですか?
A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。足立区は隣地との離隔が小さい物件や、1階店舗の営業を止められない物件が多く、実務ではこの2つのどちらかになることが少なくありません。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?
A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。足立区は北千住を中心に賃貸需要が厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。
まとめ:今週、足立区の理事会で動けること3つ
- 区の水害区域図(浸水履歴)PDFで、自分のマンションの所在地を探す — 平成6年度以降の道路冠水・浸水被害の記録です。下水道が概ね整備された後の記録なので、載っていれば重い情報になります
- 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置高さを、メジャーで実測する — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です
- 止水板設置助成を、次の総会の議案に入れる — 受付は令和9年1月29日まで、工事完了は令和9年2月26日まで。交付決定前の着工は対象外なので、大規模修繕の工程と合わせて逆算する必要があります
足立区は、水のメニューが揃っている区です。ですが揃っているぶん、区も資料を丁寧に出しています。ハザードマップ、浸水履歴、雨水出水浸水想定区域図、助成制度。材料はそろっていて、あとは自分の建物の高さと、水の入口の数に翻訳するだけです。
その翻訳のところで、工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、工事の順番を組み替える自由度が上がります。順番が変われば、同じ予算で直せる範囲が変わります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてご覧ください。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから、管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。
明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。
出典・参考資料
- 足立区「足立区洪水・内水・高潮ハザードマップ(令和4年4月改訂)」(更新日 2026年9月18日/令和8年10月発行版で内水氾濫と中小河川の最大浸水深を分離、内水は令和8年3月に東京都が水防法第14条の2に基づき指定した雨水出水浸水想定区域が根拠、想定雨量 時間最大153mm・24時間総雨量690mm、土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域の指定なし)
- 足立区「止水板設置工事助成のご案内」(更新日 2026年4月1日/建物1棟につき上限50万円・対象工事費(税抜)の2分の1、マンション管理組合も対象、令和8年4月から要配慮者利用施設を追加、受付 令和8年4月1日〜令和9年1月29日、完了期限 令和9年2月26日、関連工事として内外壁の防水工事・土間コンクリート打設工事が対象)
- 足立区「足立区水害区域図(浸水履歴)について(平成6年度から)」(更新日 2026年8月26日/平成21年度以降分は令和8年8月更新、23区の下水道普及率が平成6年度に概ね100%)
- 足立区「非木造住宅・建築物の耐震化に助成を行っています」(更新日 2026年4月2日/助成金の拡充期間を令和9年3月まで延長、共同住宅の診断5割・上限500万円、改修計画策定5割・上限300万円、改修工事5割・上限3,000万円、分譲マンション除却5割・上限2,000万円、対象は昭和56年5月までに建築、すべて事前申請)
- 足立区「建築物等耐震アドバイザー派遣制度」(更新日 2026年9月1日/平成30年7月2日開始、道路に面する高さ1.2mを超えるブロック塀等も対象、オンライン申請可)
- 足立区「江東5区広域避難推進協議会の検討結果について」(平成30年8月22日/江東5区大規模水害広域避難計画・江東5区大規模水害ハザードマップ策定)
- 東京都建設局「高潮浸水想定区域図」(令和6年12月)
- 東京都建設局「中川・綾瀬川圏域 浸水予想区域図」
- 国土交通省 関東地方整備局「荒川洪水浸水想定区域図」(平成28年5月)
- 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている足立区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。止水板設置工事助成および浸水履歴に関するお問い合わせは都市建設部都市建設課事業推進係(03-3880-5478)、ハザードマップは都市建設部都市建設課/危機管理部災害対策課(03-3880-5349/03-3880-5836)、耐震助成および耐震アドバイザー派遣は建築室建築防災課耐震化推進第一・第二係(03-3880-5317)、広域避難計画は危機管理部防災戦略課(03-3880-5083)へ、申請前に必ず最新の内容をご確認ください。止水板設置工事助成は申請の状況により受付期間より早く終了する場合がある旨を区が注記しています。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月22日


