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創業から6000棟超の施工実績

伊豆市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

伊豆市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

2026年8月23日 更新

伊豆市で分譲マンションの理事をされている方から、こんな質問をいただくことがあります。「大規模修繕に、伊豆市から補助金は出ますか?」

先に結論をお伝えします。伊豆市に、分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものへ直接お金を出す補助制度は、公開されている情報の範囲では見当たりません。これは伊豆市が冷たいという話ではなく、静岡県東部のほとんどの市で同じです。

ただし、「何もない」で終わらせてしまうと、伊豆市の管理組合は数十万円から百万円単位の支援を取りこぼします。伊豆市には、近隣の市にはない手厚さを持った制度が1つあります。アスベストの除去等に対する補助で、費用の3分の2以内・1敷地あたり120万円が限度です(出典:伊豆市 建築物アスベスト除去等事業費補助金について)。近隣の静岡市や富士市が60万円であることを考えると、これは調べる価値のある金額です。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。この記事では、伊豆市の管理組合が2026年度に現実的に動かせる制度を、市と県の一次情報だけを根拠に整理します。ネット上にある「伊豆市は耐震改修に最大○○万円」という情報が、なぜマンションには当てはまらないのかも、要綱まで戻って説明します。


この記事で答える3つの問い

  1. 伊豆市で、マンションの大規模修繕に直接使える補助金はあるのか?
  2. 直接の補助がないなら、伊豆市の管理組合は何にお金と時間を使うべきなのか?
  3. 伊豆市という土地で、工事費そのものを下げる方法は本当にないのか?

順にお答えします。結論から言えば、3番目の問いへの答えが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。


まず、伊豆市という土地を数字で押さえる

制度の話に入る前に、伊豆市がどういう市なのかを数字で確認させてください。ここを押さえないと、あとの話がすべてぼやけます。

項目 数値 出典
人口 26,911人(令和8年8月1日現在) 伊豆市 各地区世帯人口
世帯数 13,507世帯(同上) 同上
面積 363.97平方キロメートル 伊豆市公表値
地区別人口 修善寺12,953/中伊豆6,222/天城湯ヶ島4,831/土肥2,905 同上
住宅の耐震化率 84.0%(令和5年) 伊豆市耐震改修促進計画(第4期)
うち非木造の耐震化率 95.4%(2,670戸中2,549戸) 同上
年降水量 土肥1,824.5mm/湯ケ島2,842.8mm/天城山4,552.6mm 静岡地方気象台 静岡県の気象特性

この表の中で、私がいちばん驚いたのは最後の行です。同じ伊豆市の中で、年間降水量が1,824.5mmから4,552.6mmまで、2.5倍の開きがあります。

土肥は駿河湾に面した西海岸で、静岡県内でも雨の少ない地域に入ります。一方、天城山は年間4,552.6mm。静岡市の山岳部(3,000mm前後)や富士山麓(2,800mm前後)をさらに大きく上回る、県内屈指の多雨地帯です。三島市の年降水量が1,868.2mmですから、天城山はその2.4倍以上ということになります。

同じ市役所が管轄する範囲の中で、雨の量が2.5倍違う。大規模修繕という仕事にとって、雨の量は工期にも防水の仕様にも直結する、いちばん大事な条件の1つです。この話は記事の後半でもう一度取り上げます。

人口26,911人という規模も押さえておいてください。分譲マンションの絶対数が多くない市です。このことが、相見積りの取り方に効いてきます。


【最優先・今週動ける】静岡県のマンション管理士無料派遣は10件枠

伊豆市の管理組合が2026年度に取れる行動のうち、もっとも費用対効果が高いのはこれです。

静岡県が令和8年度に実施している「マンション管理組合活動活性化支援事業」で、マンション管理士を管理組合へ無料で派遣してくれます。

項目 内容
事業名 令和8年度 マンション管理組合活動活性化支援事業(マンション管理士の無料派遣)
費用 無料
受付件数 10件(上限に達した時点で受付終了)
派遣回数 各管理組合 2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス 0544-27-6561)
申込書 県ページからWordファイルでダウンロード可

出典:静岡県 マンションの管理(2026年1月5日更新)

静岡県全域で10件です。静岡市も浜松市も含めた県内全部で10件。しかも申込多数の場合は派遣先を調整すると書かれています。11月14日という期限より、10件という枠のほうが先に埋まる可能性は十分にあります。

2回の派遣を、こう使ってください

私が管理組合の立場ならこう使います。

1回目は、長期修繕計画と修繕積立金の水準チェックに充てます。「うちの積立金は足りているのか」「計画の見直しは何年前にやったか」を、利害関係のない第三者に見てもらう。ここが全部の出発点です。

2回目は、相見積りの比較と、業者選定プロセスのチェックに充てます。金額だけを並べた表では、何が高くて何が安いのか判断できません。仕様の違いを翻訳してくれる人が横にいるかどうかで、結論が変わります。

正直に申し上げますと、発注者側に専門家がついている現場のほうが、私たち工事会社も仕事がしやすいです。説明することは増えますが、あとから「聞いていない」でもめることがなくなります。専門家がいる現場を嫌がる工事会社があるとしたら、そこは選ばないほうがいいと私は思います。

「うちみたいな小さい組合が申し込んでいいのか」は考えなくていい

この事業でいちばんもったいないのは、遠慮しているうちに期限が過ぎることです。県のページに規模の制限は書かれていません。伊豆市の管理組合は、県内の政令市の管理組合と同じ枠で申し込めます。申込書をダウンロードしてファクスするのに必要な時間は、20分程度です。


静岡県のマンション管理セミナーは、伊豆市の隣で2回開かれます

もう1つ、県が実施しているのがマンション管理セミナーです。参加費は無料で、令和8年度は県内9会場で開催が予定されています。

開催地 開催日
浜松市 令和8年7月25日(土曜日)※終了
磐田市 令和8年8月29日(土曜日)
三島市 令和8年9月12日(土曜日)
熱海市 令和8年10月予定
沼津市 令和8年10月予定
静岡市 令和8年11月予定
伊東市 令和8年12月予定
富士市 令和9年2月予定
浜松市 令和9年2月予定

出典:静岡県 マンションの管理

伊豆市での開催予定はありません。ただ、この表をよく見てください。熱海市が10月、伊東市が12月です。伊豆市から見れば、いずれも同じ伊豆半島内です。修善寺から伊東市へは県道伊東修善寺線が一本で通じています。三島市で9月12日に開かれる回も、伊豆縦貫自動車道(修善寺道路・天城北道路)を使えば射程に入ります。

私からの提案は、理事長と次期理事候補の2名で行くことです。管理組合の理事は任期1年のところが多く、大規模修繕の準備は2代の理事会をまたぎます。1人だけが知っている状態にしておくと、翌年の4月にゼロに戻ります。2人で行けば、少なくとも1年は引き継がれます。


【伊豆市の最大の武器】アスベスト除去補助は3分の2・120万円

ここからが本題です。伊豆市には、近隣の市と比べて明確に手厚い制度が1つあります。

制度の中身

項目 内容
制度名 伊豆市建築物アスベスト除去等事業費補助金
対象工事 建築物の吹付けアスベストの除去・封じ込め・囲い込み、または吹付けアスベストが施工されている建築物の除去
補助率 除去等に要する経費の3分の2以内
限度額 1敷地当たり120万円(1,000円未満切捨て)
対象建築物 ①市の区域内に存する建築物であること ②除去等に関し、この要綱に基づく補助金以外の補助金の交付を受けていないものであること
注意 着手前に相談・申請が必要。申請前に着手した場合は補助対象外
要綱 令和8年4月改正
窓口 都市計画課 土地対策スタッフ 0558-83-5206

出典:伊豆市 建築物アスベスト除去等事業費補助金について(2026年4月2日更新)

ここで注目していただきたいのは、対象建築物の条件が2つしか書かれていないという点です。「市内にあること」「他の補助を受けていないこと」。用途を住宅に限る文言も、所有者の形態を限る文言も、市のページには見当たりません。分譲マンションの共用部が対象になり得るか、聞いてみる価値は十分にあります。

もちろん、市が「分譲マンションの共用部が対象です」と明記しているわけではありませんので、断定はしません。都市計画課 土地対策スタッフ(0558-83-5206)に電話1本、これで済みます。

静岡県東部の中で、伊豆市がどれだけ手厚いか

私が過去に記事にしてきた近隣市と並べてみます。

分析調査への補助 除去等への補助
伊豆市 公開情報では確認できず 3分の2以内・1敷地120万円
沼津市 25万円 3分の2以内・120万円(令和8年度の除去等は予算終了)
富士市 全額・限度25万円/棟 3分の2以内・60万円/敷地
静岡市 25万円 3分の1以内・60万円
三島市 公開情報では確認できず 公開情報では確認できず
裾野市 公開情報では確認できず 公開情報では確認できず
御殿場市 公開情報では確認できず 公開情報では確認できず

この表の意味は、はっきりしています。三島市・裾野市・御殿場市の記事で、私は「アスベストの調査費は自己負担前提で予算に計上してください」と書かざるを得ませんでした。伊豆市は違います。除去に踏み込んだときの補助が、県東部でもっとも手厚い水準にあります。

ただし、構造が近隣市と逆になっています

正直に申し上げます。伊豆市の制度は、近隣市と逆の形をしています。

沼津市・富士市・静岡市は「調査には手厚く、除去は限定的」という設計です。まず調べさせて、実態を把握することを優先している。

伊豆市は「調査への補助は公開情報で確認できず、除去には3分の2・120万円」という設計です。調べる段階は自己負担、取り除く段階を厚く支援する。

管理組合にとって、この違いは実務でこう効きます。

  • 調査費(事前調査・分析)は、自己負担前提で長期修繕計画と工事予算に計上しておく。
  • もし吹付け材が見つかったら、除去は着手前に市へ相談する。ここで120万円が動きます。

現場の話をひとつ

私が現場で20年やってきて、いちばん悔しい思いをするのは、この順番を間違えたときです。

足場を架け終わったあとに、機械室の天井裏から吹付け材が見つかったことがあります。工事は止まりました。分析の結果が出るまで動けません。その間、足場のリース料だけが1日単位で積み上がっていきます。管理組合には何の落ち度もないのに、数十万円が消えました。

吹付け材が見つかりやすいのは、私の経験では次の6か所です。

  1. 機械室
  2. 電気室
  3. 屋内駐車場の天井
  4. 階段室の裏側
  5. エレベーター機械室
  6. パイプスペース(PS)

平成29年度から、事前調査には建築物石綿含有建材調査者の関与が必要とされています。業者選定のときに「調査者は誰が担当しますか」と1問聞いてください。答えられない会社は、その時点で候補から外していいと思います。

そして伊豆市の場合は、もう1問足してください。「除去が必要になったら、市の補助金の交付決定を待ってから着手できる工程を組めますか」。伊豆市の要綱は着手前申請が必須です。交付決定を待たずに剥がしてしまえば、120万円はゼロになります。


【正直な話】伊豆市には「非木造の耐震診断補助」が見当たりません

ここは、伊豆市の管理組合にとって残念な事実ですので、はっきり書きます。

伊豆市が令和8年度に実施しているプロジェクト「TOUKAI-0⁺(トウカイゼロプラス)」総合支援事業は、全部で8つの事業から成り立っています。その8つを、マンション管理組合の目線で仕分けするとこうなります。

# 事業名 補助額 分譲マンション共用部への適用
1 わが家の専門家診断事業 無料(市が診断士を派遣) 対象外(木造住宅
2 木造住宅耐震補強助成事業(補強計画一体型) 経費と1,150,000円の少ない額 対象外(木造住宅
3 木造住宅除却事業 経費の23%以内・上限50万円 対象外(木造住宅
4 木造住宅部分補強事業 経費の5分の4以内・上限85万円(高齢者等95万円) 対象外(木造住宅
5 ブロック塀等撤去事業 20,000円/mとの少ない額の3分の2以内・上限266,000円 敷地内の該当塀があれば可能性あり
6 ブロック塀等改善事業 38,400円/mとの少ない額の3分の1以内・上限166,000円/生垣等は3分の2以内・上限333,000円 同上
7 耐震シェルター設置事業 経費の3分の2以内・上限400,000円 対象外(木造住宅の住戸内)
8 防災ベッド設置事業 経費の3分の2以内・上限400,000円 対象外(木造住宅の住戸内)

出典:伊豆市 【TOUKAI-0⁺】住宅の耐震診断・耐震補強はお済ですか?(2026年8月7日更新)

三島市・裾野市・御殿場市との決定的な差

私はこの3市についても同じ調べ方をしました。並べると差がはっきりします。

非木造(RC造等)の耐震診断への補助
三島市 あり(3分の2以内・限度200万円。ただし事業名は「非木造住宅」)
裾野市 あり(3分の2・上限200万円。基準額に「一戸建て住宅以外」の区分を明記)
御殿場市 あり(基準額表に「一戸建ての住宅以外」の面積単価あり。限度額の記載は市ページに見当たらず)
伊豆市 市の公開ページでは確認できず

伊豆市のTOUKAI-0⁺のページには、「非木造」という語自体が事業名に出てきません。8事業すべてが木造住宅・ブロック塀・シェルター/ベッドで構成されています。

さらに第4期の伊豆市耐震改修促進計画を読むと、この構図の理由が書かれています。市内の耐震性が不十分な住宅の内訳は、木造が8,750戸中1,702戸、非木造が2,670戸中121戸です。数の上では、市の耐震施策が木造戸建てに集中するのは合理的な判断です。

ただし、管理組合の側から見れば話は逆になります。伊豆市の耐震施策の中に、分譲マンションの居場所は用意されていません。自分たちで動くしかない、ということです。

断定はしませんが、聞くだけは聞いてください

市が「非木造には補助しません」と書いているわけではありません。要綱(令和8年3月改正 伊豆市建築物等耐震改修促進事業費補助金交付要綱)に別の定めがある可能性はゼロではありません。

都市計画課 土地対策スタッフ 0558-83-5206 に、こう聞いてください。

「分譲マンションの管理組合です。共用部の耐震診断に使える市の補助制度はありますか。TOUKAI-0⁺のページには木造住宅の事業しか載っていないように見えるのですが、非木造の建築物向けの制度はありませんか」

聞くのは1分です。「ない」と言われたら、それはそれで確定情報になります。理事会の引き継ぎ書に「令和8年度時点で、市の非木造向け耐震診断補助は確認できず(○月○日 都市計画課に確認)」と1行書いておけば、来年の理事がまた同じ電話をかけずに済みます。


ブロック塀は「塀から塀への作り替え」ができません

伊豆市のブロック塀補助には、他市にはない特徴があります。これは知らないと確実に事故ります。

撤去事業と改善事業の中身

区分 基準額 補助率 上限
ブロック塀等撤去事業 塀の長さ×20,000円 経費と基準額の少ない額の3分の2以内 266,000円
ブロック塀等改善事業(通常) 塀の長さ×38,400円 少ない額の3分の1以内 166,000円
ブロック塀等改善事業(生垣等に作り替え) 塀の長さ×38,400円 少ない額の3分の2以内 333,000円

対象は、住宅または事業所などから避難所および避難地などへ至る、私道を除く経路に面するブロック塀です。地盤面から高さ60センチメートル以上にブロック塀を残さないことが条件とされています。

出典:伊豆市 【TOUKAI-0⁺】

★ここが伊豆市固有の落とし穴です

市のページに、こう明記されています。

制度変更に伴い、ブロック塀からブロック塀への作り替えは補助対象外となります。

つまり伊豆市では、危険なブロック塀を撤去して新しいブロック塀を建て直すという選択に、補助は出ません。

御殿場市では、建替え事業のほうが基準額も上限額も撤去より大きく設定されていました。伊豆市は逆で、塀を残す方向にはお金が出ない設計です。

管理組合にとって、この違いは総会の議案そのものを変えます。

  • 塀を撤去すると、目隠しがなくなります。1階住戸から「道路から丸見えになった」という声が出ます。
  • しかし伊豆市では、ブロック塀で作り直すと補助はゼロ。
  • 生垣等に作り替えるなら、3分の2以内・上限333,000円が出ます。撤去(266,000円)より上限が高い。

つまり伊豆市の管理組合にとって、「撤去して生垣にする」が金額的にも実務的にもいちばん筋が通る選択になります。生垣等には一定の基準がありますので、市の「生垣等の基準」PDFを事前に確認してください。

敷地図を広げる30分の作業

私が理事会でよくお願いするのは、敷地図を印刷して、ブロック塀に蛍光ペンを引くという作業です。30分あれば終わります。

見落としが多いのは次の場所です。

  • 駐輪場の裏側
  • 駐車場の外周
  • ゴミ置き場の脇
  • 隣地との境界(隣家との共有物になっていないかも確認)

そして塀の工事は、大規模修繕の本体工事とは別契約に切り出してください。理由は2つあります。1つは、補助金には交付決定前の着手が認められないこと。もう1つは、本体工事の中に混ぜてしまうと「どこまでが塀の工事費か」が見積書から読み取れなくなり、申請書類が作れなくなることです。


「伊豆市は耐震改修に最大115万円」はマンションの話ではありません

検索するとこういう情報が出てきます。念のため潰しておきます。

木造住宅耐震補強助成事業(補強計画一体型)の1,150,000円は、昭和56年5月31日以前に着工された木造住宅を、補強後の総合評点1.0以上にする工事への補助です。RC造・SRC造のマンション共用部には当たりません。

もう1つ、令和8年度から高齢者割り増しは廃止されました(市ページに明記)。古い情報のまま「高齢者は上乗せがある」と書いてあるサイトを見かけますが、令和8年度は違います。

理事会でこの話が出たときは、「それは木造戸建ての金額です」と一言で終わらせてください。そのうえで、理事の中に旧耐震の木造戸建てを持っている方がいれば、市のTOUKAI-0⁺のページを教えてあげてください。費用ゼロでできる情報還元です。


老朽空家等除却支援は「木造住宅を除く」=伊豆市の隠れた特徴

これは大規模修繕とは直接つながりませんが、伊豆市の管理組合、とくにリゾート型のマンションを持つ組合には知っておいていただきたい制度です。

項目 内容
制度名 伊豆市老朽空家等除却支援事業補助金
補助対象者 空き家の所有者、相続人、敷地の所有者、管理者
補助対象物件 建築物(木造住宅を除く。)
補助額 ①補助対象経費の2分の1以内・上限300万円(解体後に市へ土地を寄附する場合など要綱第6条第1号に該当する場合)/②補助対象経費の2分の1以内・上限50万円
令和8年度の変更 補助対象区域が「市内全域」になりました

出典:伊豆市 管理不全な空き家の適正管理について(2026年4月2日更新)

「建築物(木造住宅を除く。)」という書き方に注目してください。多くの自治体の空き家除却補助は木造住宅を対象にしていますが、伊豆市は逆に木造住宅を除いています(木造住宅は前述のTOUKAI-0⁺の木造住宅除却事業が受け皿です)。

区分所有の分譲マンションが「空家等」に当たるかどうかは、専有部と共用部の権利関係が絡むため簡単ではありません。ここは断定を避けます。ただ、伊豆半島には、区分所有者の高齢化・所在不明化が進み、実質的に機能停止に近づいているリゾートマンションが存在します。そういう建物の出口を考えるとき、市に非木造の除却補助が用意されているという事実は、知っているかどうかで議論の幅が変わります。

私は工事会社ですから、本音を言えば「直して使い続けましょう」と申し上げたい立場です。それでも、建物の終わり方まで含めて考えられる管理組合のほうが、結局は良い判断をされます。


マンション長寿命化促進税制の記載が、伊豆市のページに見当たりません

大規模修繕をした翌年度に固定資産税が減額される「マンション長寿命化促進税制」。三島市や富士市は市のページで減額割合まで明記していますが、伊豆市はどうでしょうか。

伊豆市の固定資産税のページ一覧に掲載されている減額制度は、次の3つだけです。

  • 省エネ改修工事に係る固定資産税の減額
  • 住宅のバリアフリー改修工事に伴う固定資産税減額措置
  • 住宅の耐震改修に伴う固定資産税の減額措置

出典:伊豆市 固定資産税(一覧)

マンション長寿命化促進税制の記載は、見当たりません。

「使えない」と断定はしません。市の条例に定めがあってもページに掲載していないだけ、という可能性は十分にあります。実際、御殿場市も裾野市も同じ状態でした。

税務課 資産税スタッフ(0558-72-9852)に聞くべき3項目

  1. マンション長寿命化促進税制について、伊豆市の条例に減額の定めはありますか。あるなら減額割合は何分の1ですか。
  2. 申告は区分所有者ごとですか。それとも管理組合が取りまとめて提出できますか。(三島市は「管理組合が取りまとめる場合、添付書類は全体で1部のみ」と明記しています。この差は100戸のマンションでは事務負担が桁違いです)
  3. 「大規模の修繕等証明書」は誰が発行するものですか。

制度そのものの落とし穴を2つ

条例の有無にかかわらず、この税制には管理組合が踏みやすい落とし穴が2つあります。

落とし穴①:仕様書に3工事が揃っていない。長寿命化工事とは、屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装工事の3つを指します。「予算が厳しいから屋上防水は次回にしよう」という理事会の判断が、そのまま税制の要件から外れる原因になります。

落とし穴②:証明書の発行を契約に入れ忘れる。申告期限は工事完了から3か月以内です。竣工してから「証明書をください」と言っても、書類を揃えるのに時間がかかります。請負契約の段階で、証明書の発行を業務範囲に明記させてください。


管理計画認定制度:静岡県は「町域」のみ。市の窓口は要確認

マンション管理計画認定制度は、管理組合が作る長期修繕計画などが一定基準を満たすことを行政が認定する制度です。認定を取ると、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられるなどの効果があります。

静岡県のページには、こう明記されています。

マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)

出典:静岡県 マンションの管理

伊豆市は「市」ですので、県では申請できません。伊豆市が自ら受付をしているかどうかは、市の公開ページからは確認できませんでした。ここも断定を避け、都市計画課への電話に1問足していただく形にします。

参考までに、県が「町域」向けに設定している認定申請手数料は、令和8年4月1日に改定されています。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数-1) 4,000円+1,800円×(計画数-1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数-1) 28,100円+16,200円×(計画数-1)

適合証があるかないかで7倍の差です。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続き支援サービスを経由して事前確認適合証を取るのが王道、ということがこの表から読み取れます。

認定基準5分野を、理事会のチェックリストに

認定を取るかどうかは別として、この5項目は「うちの管理は大丈夫か」を測る物差しとして使えます。

分野 主な基準 よくあるつまずき
管理組合の運営 管理者等が定められている/集会を年1回以上開催/監事が選任されている 総会が書面決議だけで終わっている
管理規約 管理規約が作成されている/緊急時の専有部立入り、修繕等の履歴情報の保管が定められている 規約が分譲時のまま
管理組合の経理 管理費と修繕積立金等の区分経理/積立金会計から他への充当なし/滞納に対する措置を講じている 滞納の督促ルールが文書化されていない
長期修繕計画 計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上7年以内に見直し/計画期間内に借入金残高がない 「30年以上」と「7年以内」の2つで落ちる組合が最多
その他 区分所有者名簿・居住者名簿を備え、年1回以上確認 名簿が10年前のまま

私の経験上、実務でいちばん引っかかるのは長期修繕計画の「30年以上」と「7年以内の見直し」です。そして幸いなことに、この2つは大規模修繕の準備でどのみちやる作業です。認定を取るかどうかを先に決めておけば、作業が一度で済みます。


2026年の新しい論点:マンション管理適正化支援法人の登録制度

これは他の記事ではまだあまり触れられていない、新しい話です。

令和7年5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号)」が公布され、同年11月28日に一部施行されました。これに伴い、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が創設されています。

専門知見を持つ民間団体(一般社団法人・一般財団法人・NPO法人など)が行政の登録を受け、公的な立場からマンション管理を支援する仕組みです。

支援法人の業務区域 登録主体
市の区域
町の区域

そして静岡県のページには、こう書かれています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません
なお、各市が所管する市の区域における登録制度については、各市のマンション担当部署に直接お問い合わせください。

出典:静岡県 マンションの管理

伊豆市は「市」ですので、この制度の登録主体は伊豆市自身です。伊豆市が今後この登録制度を所管する予定があるのかどうか、都市計画課への電話に1問足しておくといいと思います。すぐに何かが変わる話ではありませんが、理事会の引き継ぎ事項として残しておく価値のある論点です。

あわせて、令和7年にマンション標準管理規約が改正されています。県のページから改正パンフレットがダウンロードできますので、規約の見直しを検討している組合は目を通しておいてください。


伊豆市耐震改修促進計画(第4期)が示す、伊豆市の建物の現実

令和8年4月に、伊豆市耐震改修促進計画(第4期・令和8~12年度)が公表されました。ここには、伊豆市の建物についての厳しい数字が並んでいます。

数値目標と現状

建築物の種類 前計画の目標 現状 本計画の目標
住宅 令和7年度末 95% 令和5年 84.0% 令和12年度末 耐震性が不十分なものをおおむね解消
特定建築物 令和7年度末 95% 令和7年3月 83.6% 同上
大規模建築物 令和7年度末 95% 令和7年3月 75.0% 同上
沿道建築物 令和7年3月 21.3%(耐震性不足解消率) 令和12年度末 50%以上

出典:伊豆市耐震改修促進計画(第4期)

住宅の耐震化率84.0%という数字を、近隣市と並べてみます。

住宅の耐震化率
富士市 94.9%(令和5年)
御殿場市 94.2%(令和5年)
三島市 93.4%(令和5年)
伊豆市 84.0%(令和5年)

10ポイント前後の差があります。平成30年の81.7%から2.3ポイントしか上がっておらず、市自身が「第3期計画の目標である令和7年度末の耐震化率95%の達成は厳しい状況」と書いています。

構造別に見ると、話が変わります

ただし、この84.0%は木造と非木造を合わせた数字です。分けるとこうなります。

構造 昭和56年以降 昭和55年以前 耐震性有 住宅数 耐震化率
木造 5,511戸 3,239戸 1,537戸 8,750戸 80.5%
非木造 2,224戸 446戸 325戸 2,670戸 95.4%
合計 7,735戸 3,685戸 1,862戸 11,420戸 84.0%

非木造は95.4%。伊豆市の分譲マンションにとって、躯体の耐震性はおおむね確保されていると読めます。伊豆市の耐震化の課題は、圧倒的に木造戸建てにあります。

だからこそ、大規模修繕の意味が変わります

第4期計画の対象建築物の定義に、大事な変更があります。

対象建築物は「現行の耐震基準の施行以前に建築に着手された建築物又は地震により被害を受けた建築物若しくは経年劣化が進んだ建築物」とする。

そして解説にこう書かれています。

新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などに見舞われ、経年劣化による耐震性能の低下が懸念される。適切なメンテナンスが行われていない建築物はなおのことである。

さらに、屋外における安全性確保の項目に、こうあります。

地震によって瓦屋根、窓ガラス、外装材等(非構造部材等)や屋外広告物が落下すると、通行人等に死傷者が出るおそれがあるだけではなく、道路通行の妨げとなり避難や救助・消火活動にも影響を及ぼす。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。「大規模修繕は、きれいにする工事ではありません。落ちるものを、落ちないようにする工事です。」

躯体が新耐震でも、浮いたタイルは落ちます。手すりの付け根が錆びれば抜けます。シーリングが切れれば水が入ります。伊豆市の計画が「経年劣化が進んだ建築物」を正面から対象に加えたことは、私たちの仕事の意味を行政が言語化してくれたようなものです。

エレベーターやエスカレーターの安全性確保、給湯設備やそれに付随する配管の落下防止についても、計画本文で言及されています。大規模修繕のときに設備の点検を一緒にやる根拠として、総会資料に引用できます。


伊豆市の想定地震は「南海トラフ」。近隣3市とは前提が違います

ここは、伊豆市の記事で外せない部分です。

第4期計画に掲載されている、静岡県第4次地震被害想定の数字です。

区分 南海トラフ巨大地震 相模トラフ沿いの地震(元禄型関東地震)
規模 マグニチュード9.0程度 マグニチュード8.2程度
全壊・焼失棟数 約1,500棟 約300棟
死者数 約1,400人 約10人

出典:伊豆市耐震改修促進計画(第4期)

この表を、他市と比べてください

私が書いてきた近隣市の記事では、相模トラフのほうが被害が大きい市が続いていました。三島市も御殿場市も、被害想定の最大は相模トラフ沿いの元禄型関東地震でした。

伊豆市は違います。南海トラフ巨大地震で全壊・焼失約1,500棟、相模トラフで約300棟。5倍の差があります。

そして、もっと目を引くのは死者数です。全壊・焼失が約1,500棟なのに対し、死者が約1,400人。三島市は全壊焼失約2,700棟に対して死者約20人でした。棟数と死者数の比率が、まったく違います。

この差が何を意味しているかは、地図を見ればわかります。伊豆市は土肥地区で駿河湾に面しています。南海トラフ巨大地震では、津波の影響を正面から受ける立地です。

理事会で、この数字を1行だけ引用してください

修繕積立金の値上げ議案は、たいてい「必要性は分かるが、いまでなくてもいいのでは」という反応で先送りされます。

そういうときに、この表を1枚出してください。「市が令和8年4月に公表した計画によれば、南海トラフ巨大地震で市内の死者は約1,400人と想定されています」。数字には、100回の説明より強い力があります。

市が「能登半島地震と地理的条件が似ている」と書いています

第4期計画の目的の項に、こう明記されています。

令和6年1月の能登半島地震は、地理的条件が似ている伊豆半島地域の防災力の更なる強化の必要性を認識させた。

さらに沿道建築物の現状の項では、こうです。

特に当市の一部においては、幅員が狭い道路に古い住宅が連なっている地域特性から、耐震化が遅れている。また、地理的条件が能登半島と共通し、代替路が限られているため、大規模地震時に沿道建築物の倒壊により、緊急車両の通行が妨げられるおそれがある。

計画には「孤立予想集落対策」という項目まで立てられています。

これは、大規模修繕の工程を考えるときにも効いてくる話です。代替路が限られるということは、資材の搬入路も限られるということです。伊豆市の現場では、材料を積んだトラックが通れるか、足場材の荷降ろしスペースが取れるかを、見積り前に確認しておく必要があります。ここを見落とすと、後から「小運搬費」という名目で追加が出ます。


★伊豆市の気候は、同じ市内で2.5倍違う

さて、記事の冒頭でお預けにした話に戻ります。ここが伊豆市の記事でいちばんお伝えしたい部分です。

年降水量:土肥1,824.5mm/湯ケ島2,842.8mm/天城山4,552.6mm

観測地点 地区 年降水量(平年値1991-2020)
土肥 土肥地区(駿河湾西海岸) 1,824.5mm
湯ケ島 天城湯ヶ島地区(内陸) 2,842.8mm
天城山 市南部の山地 4,552.6mm
(参考)三島 1,868.2mm
(参考)御殿場 2,874.6mm
(参考)静岡 2,327.3mm

出典:静岡地方気象台 静岡県の気象特性

静岡地方気象台は、静岡県を「日本一の標高差を持つ県」と表現しています。そして伊豆市は、その静岡県の中でも、海抜0メートルの土肥から天城の山地まで、1つの市の中に日本一の標高差の縮図を抱えている市です。

この2.5倍が、工事に何をもたらすか

まず、雨天中止日数がまったく違います。土肥のマンションと、天城湯ヶ島のマンションでは、同じ工期を組んではいけません。年間降水量が1.5倍違えば、雨で止まる日も相応に増えます。

私が伊豆市の管理組合にいつも申し上げるのは、この2つです。

  1. 見積りを取るときに「雨天中止を何日見込んだ工程ですか」と聞いてください。答えられない業者は、工程を真剣に組んでいません。
  2. 総会で住民に説明するときは、業者の提示工期に2週間上乗せして伝えてください。「3か月で終わります」と言って4か月かかると信頼を失います。「3か月半から4か月です」と言って3か月半で終われば、誰も文句を言いません。

次に、防水の仕様が違ってきます。天城山周辺の4,552.6mmという雨量は、屋上・パラペット・笠木にとって過酷な条件です。同じ市内だからという理由で、土肥のマンションと同じ仕様で見積もられていたら、根拠を聞いていいと思います。

そして、冬の条件も違います。静岡地方気象台は「冬期は天城山付近で降雪もみられ、積雪となることも珍しくありません」と書いています。塗料やシーリングには施工可能温度(おおむね5℃以上)があります。天城の標高帯では、冬の午前中に作業が止まる日が出ます。一方、土肥は沿岸部で年平均気温16~17℃の温暖な地域です。

★塩害:伊豆市は「海の市」でもあります

もう1つ、近隣3市と決定的に違う点があります。

三島市・裾野市・御殿場市は、いずれも駿河湾に面していない内陸市でした。私はそれらの記事で「沿岸部と同じ重防食仕様が一律に入っているなら、根拠を聞いていいです」と書きました。

伊豆市では、この話が反転します。土肥地区は駿河湾に面した西海岸です。しかも静岡地方気象台によれば、伊豆半島西海岸では南西から西風が卓越します。海からの風が、そのまま建物に当たる立地です。

塩害が出やすいのは、鉄部です。

  • バルコニーの手すりの付け根
  • 避難ハッチ、避難ハッチの枠
  • 外部階段の踏板と側桁
  • 屋外の配管支持金物
  • 玄関扉の枠、メーターボックスの扉

土肥地区のマンションで、ケレン(錆落とし)の等級と防錆下塗りの仕様が、修善寺のマンションと同じになっていたら、それは検討不足です。逆に、修善寺や中伊豆の内陸のマンションで沿岸部と同じ重防食仕様が一律に入っているなら、その分の予算は下地補修に回したほうが建物のためになります。

同じ伊豆市の中で、これだけ条件が違う。私が「面によって、地区によって、傷み方が違う」と申し上げるのは、こういうことです。


伊豆市の工事適期カレンダー

以上を踏まえて、伊豆市で大規模修繕を打つならいつがいいかを整理します。

時期 評価 理由
3月下旬~5月 気温が安定。ただし春雨で止まる日もある
6月~7月上旬 梅雨。伊豆半島は前線がかかりやすい
7月中旬~8月 天城の標高帯は沿岸部より作業環境が良い。ただし夕立に注意
9月~10月中旬 ×~△ 台風シーズン。足場の倒壊リスクと養生の手間。伊豆半島は台風の常襲地帯
10月下旬~11月 年間で最も安定した窓
12月~2月 △~○ 土肥・修善寺は温暖で作業可能日が多い。天城の標高帯は朝の冷え込みと降雪に注意

伊豆市の窓は、春と晩秋の2つです。そして、晩秋の窓のほうがはっきりしています。

問題は、この窓を押さえるには、前年の秋までに業者選定を終えている必要があるということです。いま2026年8月に動き始めた管理組合が現実的に狙えるのは、2027年の春か秋です。「来年やろう」と言い出したときには、もう来年ではなく再来年になっている。これが大規模修繕の時間感覚です。

静岡県では暖候期(4~9月)の夜間・早朝に、局地的な前線による大雨が発生することがしばしばあると気象台が注意喚起しています。伊豆市のような山地を抱える市では、朝の予報が外れて午前中まるごと止まることがあります。工程に余裕を持たせてください。


ここからは、私の会社が仕事をいただく話につながります

先に申し上げておきます。ここから書くことは、株式会社明誠が利益を得る話につながります。そのうえで読んでください。

3つの工法の比較

工法 向いている建物 向いていない建物 費用の考え方
通常足場工法 中低層、形状が複雑、下地補修の物量が多い、全面改修 敷地に余裕がない、居住者の生活影響を抑えたい 仮設費が総工事費の15~25%
ロープアクセス工法(無足場) 高層、足場が架けにくい、部分補修、コスト最重視 タイル浮きが広範囲、下地補修の物量が非常に多い 仮設費を大幅に圧縮できる
ハイブリッド工法 大規模・複雑物件、面によって劣化度が違う建物 小規模で単純形状の建物 部位ごとに最適化して総額を下げる

正直に申し上げます。ロープアクセスは、すべての建物に向くわけではありません。タイルの浮きが広範囲に出ていて下地補修の物量が多い建物は、足場を架けたほうが安く、早く終わります。そういうときは「正直に足場でいきましょう」と申し上げます。3つとも持っているから、正直に言えるのです。

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法の中身をご自分で確かめたい方は、そちらもご覧ください。

仮設足場は、総工事費の15~25%

ここが、この記事でいちばん申し上げたい数字です。

総工事費 仮設足場費の目安(15~25%)
3,000万円 450万~750万円
5,000万円 750万~1,250万円
8,000万円 1,200万~2,000万円

この記事で紹介してきた伊豆市の補助金は、ブロック塀の撤去で266,000円、生垣への改善で333,000円、アスベスト除去で最大120万円です。

桁が違います。

私は理事会で、こういう光景を何度も見てきました。266,000円の申請書類の書き方を3時間議論して、750万円の仮設費を「一式」の1行で5分で通す。

お願いですから、議論に費やす時間の配分を、金額の大きさに合わせてください。補助金の申請は大事です。でも、そこに3時間かけるなら、仮設工事の内訳に3時間かけたほうが、管理組合のお金は残ります。

「敷地に余裕がある」は「足場を架けるべき」とイコールではない

伊豆市は、都心部と違って敷地に余裕のあるマンションが多い地域です。だから足場が架けられる。それは事実です。

ただ、架けられることと、架けるべきことは別です。

理事会で、この3つを確認してください。

  1. 今回は全面改修ですか、部分補修ですか。部分補修なのに全面に足場を架けていませんか。
  2. 居住者が2~3か月、バルコニーを塞がれる生活を受け入れられますか。洗濯物が干せない、窓が開けられない、防犯上の不安がある。この負担は工事費に計上されていません。
  3. 見積書の仮設工事は「一式」になっていませんか。平米単価とリース期間に分解されていますか。

この3つを聞くだけで、見積りの中身は変わります。

なお、ロープアクセス工法の一般的な安全基準や施工事例についてはロープアクセスドットコムで解説しています。工法の是非をご自分で判断したい理事の方は、一次情報として目を通してみてください。

大規模修繕の全体像については大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセス工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介にまとめてあります。


伊豆市のマンションを想定した、2つのモデルケース

実際にどれくらい変わるのか、具体的な数字で示します。あくまでモデルケースであり、建物の状態によって結果は変わります。

ケース1:修善寺エリア/築26年・8階建て・42戸

項目 従来足場工法 ハイブリッド工法
総工事費 7,000万円 6,100万円
差額 ▲900万円
1戸あたり 約167万円 約145万円(▲約21万円)
工期 約1か月短縮

組み方はこうです。バルコニー側は足場を架けます。手すりの塗替え、床防水、サッシまわりのシーリングと、作業量が多いからです。一方、妻面と屋上まわりはロープアクセスにします。ここは開口部が少なく、作業員の滞在時間も短い。ここに足場を架けるのはもったいない。

ケース2:市郊外/築42年・5階建て・18戸

項目 従来足場工法 ロープアクセス主体
総工事費 3,300万円 2,700万円
差額 ▲600万円
1戸あたり 約183万円 約150万円(▲約33万円)
資金 一時金が必要 機構融資で一時金ゼロも可能

18戸で3,300万円は、1戸あたり183万円です。同じ工事を100戸のマンションでやれば1戸33万円です。戸数が少ないマンションほど、1戸あたりの負担が重くなる。だから、戸数が少ないマンションほど、工法選定が効きます。

伊豆市は人口26,911人の市です。大規模なタワーマンションが林立する街ではありません。ケース2が自分ごとになる管理組合のほうが多いはずです。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

# 打ち手 メリット デメリット
一時金の徴収 借入なし 総会で通りにくい。滞納リスク
住宅金融支援機構の融資 一時金ゼロにできる 利息負担。総会決議が必要
段階施工(分割発注) 1回の負担が軽い 仮設費が回数分かかり、総額はむしろ増える
工法の見直し 総額そのものが下がる 設計を固めた後では選べない

④を最初に検討してください。これは順番の問題です。

設計に入る前なら、①②③④の4択があります。しかし設計事務所と仕様を固め、足場前提で数量を拾ってしまうと、④は事実上消えます。足場ありきで積算された数量から、あとで工法だけ変えることはできないからです。

住宅金融支援機構の3つの制度

制度 内容
共用部分リフォーム融資 管理組合名義で借りられる。全期間固定金利。マンション管理センターの債務保証を使えば、理事長個人の連帯保証は不要
マンションすまい・る債 年1回募集・口数上限があり実質先着順。積立金の運用先
マンションライフサイクルシミュレーション 将来の資金計画を試算できる無料ツール

金利は情勢で変わりますので断定は避けますが、100戸のマンションが2,000万円を10年で借りるとして、金利が0.2%違えば、総支払額で数十万円の差が出ます。管理計画認定を取ると金利が引き下げられる仕組みがあるため、認定と融資はセットで考えると得です。

そして総会実務の話をします。「一時金50万円をお願いします」という議案と、「月々3,000円の見直しをお願いします」という議案では、通り方がまったく違います。②と④を組み合わせると、議案の性格そのものが変わります。


伊豆市版・18か月逆算カレンダー

時期 やること 連絡先
今週 県のマンション管理士無料派遣に申込(10件枠・11月14日締切) 静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561
18か月前 劣化診断。長期修繕計画の見直しが7年以内か確認
17か月前 過去の工事記録・図面・保証書を集める
16か月前 管理計画認定の受付を市がしているか確認。認定基準5分野を自己点検 都市計画課 0558-83-5206
15か月前 非木造の耐震診断に使える市の制度があるか電話確認 都市計画課 0558-83-5206
14か月前 アスベスト事前調査を、自己負担前提で工程と予算に計上
12か月前 工法選定(設計に入るのはこの後)
11か月前 長寿命化促進税制の条例の有無と減額割合を確認。仕様書に3工事が入るか点検 税務課 資産税スタッフ 0558-72-9852
10か月前 マンション管理センターへ事前確認を依頼し、適合証を取得
9か月前 資金計画。機構へ事前相談。相見積り先を市内に限定しない
8か月前 管理計画認定の申請(申請先を確認したうえで)
7か月前 敷地図でブロック塀を洗い出し、避難経路に面しているか市に確認 都市計画課 0558-83-5206
6か月前 ブロック塀の交付申請。本体工事とは別契約に切り出す
5か月前 アスベストが見つかった場合、除去の交付申請(着手前必須) 都市計画課 0558-83-5206
4か月前 交付決定後に契約
着工時 雨天中止の見込み日数を工程表で再確認
竣工後3か月以内 固定資産税の減額申告(条例に定めがある場合) 税務課 0558-72-9852
引き継ぎ時 電話した日付・担当課・聞いたこと・答えの4点をA4 1枚にまとめて申し送り

このカレンダーは18か月あります。理事の任期が1年なら、2代の理事会をまたぎます。だからこそ、最後の1行が大事です。「電話した日付・担当課・聞いたこと・答え」の4点セット。これだけで、翌年の理事会が同じ電話を3回かけずに済みます。


相見積りで確認してほしい3点

① 数量の根拠は、図面拾いですか、現地実測ですか

とくにタイルの浮き面積とシーリングの延長です。図面から拾った数量と、実際に打診して測った数量は、まったく違います。

② 仕様は、メーカー名・製品名・グレード・希釈率・塗布回数まで書かれていますか

「シリコン塗料」では比較になりません。同じ「シリコン」でも、耐用年数が7年のものと15年のものがあります。製品名まで書かせてください。

③ 「別途」の中身と、下地補修の数量超過時の単価を、契約前に明記させてください

これが紛争予防の最重要ポイントです。「タイル浮き想定50平方メートルが、実際は120平方メートルだった」というのは、珍しいどころか、想定どおりに収まるほうが少ないくらいです。

超過したときの平方メートル単価を契約前に見積書に書かせておけば、追加費用の交渉は数字の掛け算で終わります。書かせていなければ、竣工前に「言った・言わない」が始まります。

★伊豆市の管理組合へ:相見積り先を市内に限定しないでください

伊豆市は人口26,911人の市です。分譲マンションの絶対数が多くありません。ということは、大規模修繕を専門にやっている地元業者の数も限られます。市内だけで探すと、相見積りが2社になってしまう。2社では比較になりません。

一方で、伊豆市には伊豆縦貫自動車道(修善寺道路・天城北道路)が通っており、伊豆中央道を経由して沼津・三島とつながっています。伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅からは三島駅まで一本、三島から東海道新幹線で品川まで最短37分。首都圏からも静岡市からも日帰り圏です。

日帰りできるということは、宿泊費と長距離移動費が見積りに乗らないということです。範囲を広げてください。3社、できれば4社。それだけで相場が見えます。


今週、伊豆市の理事会ができる5つのこと

  1. 静岡県のマンション管理士無料派遣に申し込む(10件枠・11月14日締切/ファクス 0544-27-6561)
  2. 都市計画課(0558-83-5206)に3問:①非木造の耐震診断に使える制度はあるか ②アスベスト除去補助は分譲マンションの共用部でも対象になり得るか ③管理計画認定の受付を市はしているか
  3. 税務課(0558-72-9852)に2問:①マンション長寿命化促進税制の条例の定めと減額割合 ②管理組合が申告を取りまとめられるか
  4. 敷地図を印刷して、ブロック塀に蛍光ペンを引く(30分)
  5. 10月の熱海市/12月の伊東市のマンション管理セミナーを、理事会の議題に載せる

全部やっても、実働は2時間かかりません。電話2本で20分です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 伊豆市に、マンションの大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
A. 公開情報の範囲では、共用部の大規模修繕に直接使える市の補助金は見当たりません。ただしアスベスト除去等(3分の2以内・1敷地120万円)とブロック塀(撤去は3分の2以内・上限266,000円ほか)は、工事の一部に関わる可能性があります。

Q2. 伊豆市のアスベスト補助は、分譲マンションでも使えますか。
A. 市のページに記載されている対象条件は「市内にある建築物であること」「他の補助を受けていないこと」の2つのみで、用途や所有形態を限る文言は見当たりません。ただし市が明記しているわけではないため、都市計画課 0558-83-5206 への事前相談が必要です。

Q3. 「伊豆市は耐震改修に最大115万円」と書いてあるサイトを見ました。
A. それは木造住宅耐震補強助成事業(補強計画一体型)の金額で、RC造・SRC造のマンション共用部には当たりません。あわせて、令和8年度から高齢者割り増しは廃止されています。

Q4. 非木造の耐震診断に、伊豆市の補助はありますか。
A. 市の公開ページでは確認できませんでした。三島市・裾野市・御殿場市にはある制度ですので、伊豆市にもあるか都市計画課へ電話でご確認ください。

Q5. ブロック塀を撤去したあと、新しいブロック塀を建てられますか。
A. 建てること自体は可能ですが、市のページに「制度変更に伴い、ブロック塀からブロック塀への作り替えは補助対象外」と明記されています。生垣等に作り替える場合は3分の2以内・上限333,000円が用意されています。

Q6. マンション管理計画認定は、伊豆市で申請できますか。
A. 静岡県の認定制度は「県内の町域」が対象と明記されており、市である伊豆市は県では申請できません。市が受付をしているかは市のページから確認できませんでしたので、都市計画課へご確認ください。

Q7. 長寿命化促進税制の減額は、伊豆市で受けられますか。
A. 伊豆市の固定資産税のページには、省エネ・バリアフリー・耐震の3つの減額しか掲載されておらず、長寿命化促進税制の記載は見当たりません。税務課 0558-72-9852 へご確認ください。

Q8. 伊豆市の大規模修繕は、いつ着工するのがいいですか。
A. 10月下旬から11月がもっとも安定しています。次いで3月下旬から5月。9月から10月中旬は台風シーズンのため避けたほうが無難です。ただし土肥・修善寺・天城で条件が異なるため、建物の立地で判断してください。

Q9. 土肥のマンションと修善寺のマンションで、仕様は変えるべきですか。
A. 私は変えるべきだと考えています。土肥は駿河湾に面し西風が卓越する塩害環境で、鉄部の防錆仕様を厚くする価値があります。一方、内陸側は塩害より紫外線・凍結融解・多雨への対策に予算を配分したほうが、建物のためになります。

Q10. ロープアクセス工法は、どんなマンションでも使えますか。
A. いいえ。タイルの浮きが広範囲に出ていて下地補修の物量が多い建物は、足場を架けたほうが安く早く終わります。当社は足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを扱っているため、建物に合わない工法を無理に勧める必要がありません。


この記事のポイントまとめ

  • 伊豆市に、共用部の大規模修繕への直接補助は公開情報では見当たらない
  • ただしアスベスト除去等は3分の2以内・1敷地120万円で、県東部で最も手厚い水準
  • 一方で分析調査への補助は確認できず。近隣市と補助の構造が逆になっている
  • 非木造の耐震診断補助は市の公開ページで確認できず(三島・裾野・御殿場にはある)
  • ブロック塀は塀から塀への作り替えが補助対象外。生垣等なら2/3・上限333,000円
  • 老朽空家等除却支援は「木造住宅を除く」建築物が対象という珍しい設計
  • 長寿命化促進税制の記載は市のページに見当たらず、税務課への確認が必要
  • 管理計画認定は県が「町域のみ」。市の受付有無は要確認
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は県内10件枠・11月14日締切が最優先アクション
  • 県のセミナーは熱海市10月・伊東市12月に隣接エリアで開催
  • 住宅の耐震化率84.0%は近隣市より10ポイント低いが、非木造は95.4%
  • 南海トラフ巨大地震で全壊焼失約1,500棟・死者約1,400人。相模トラフの5倍近い
  • 市自身が「能登半島地震と地理的条件が似ている」「代替路が限られる」と明記
  • 年降水量は土肥1,824.5mm/湯ケ島2,842.8mm/天城山4,552.6mmで市内2.5倍差
  • 工事適期は10月下旬~11月が最良、次いで3月下旬~5月
  • 仮設足場は総工事費の15~25%。補助金とは金額の桁が違う
  • 相見積りは市内に限定せず、伊豆縦貫道と修善寺駅を使って範囲を広げる

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主なお問い合わせ先

用件 担当 電話
耐震・ブロック塀・アスベスト・空き家・建築相談 伊豆市 都市計画課 土地対策スタッフ(中伊豆支所内 伊豆市八幡500-1) 0558-83-5206
固定資産税の減額・申告 伊豆市 税務課 資産税スタッフ(伊豆市小立野38-2) 0558-72-9852
市役所代表 伊豆市役所 0558-72-1111
マンション管理士の無料派遣 一般社団法人静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561
マンション管理全般・認定制度 静岡県 くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課 054-221-3084

出典・参考資料


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3つを建物に応じて提案できる改修会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月23日


免責事項:本記事は公開されている一次情報をもとに2026年8月23日時点で整理したものです。補助制度の内容・金額・受付状況・期限は変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各窓口で最新の情報をご確認ください。


伊豆市を調べていて、私が一番印象に残ったのは、市が自分たちの計画に「能登半島地震と地理的条件が似ている」と書いていたことでした。行政の文書としては、かなり踏み込んだ書き方だと思います。それだけ真剣だということです。

もう1つ印象に残ったのは、雨の量です。土肥で1,824.5mm、天城山で4,552.6mm。同じ市の中でこれだけ違う場所は、そうそうありません。同じ市だから同じ仕様、同じ工期、というのが通用しない市なのです。逆に言えば、建物ごとに条件を読んで組み立てれば、ちゃんと差が出せる市でもあります。

まずは電話2本で20分(都市計画課 0558-83-5206/税務課 0558-72-9852)。そして、静岡県のマンション管理士無料派遣の申込書だけは、今週中にファクスしてください。10件です。

工法の相談や見積りの読み方だけでも構いません。総会の前段階の整理でお役に立てることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。