大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

大規模修繕の「夏工事」で誰が責任を負うのか——熱中症対策が罰則付きで義務化された今、収益物件オーナーと管理組合が知るべき工期・工法の判断軸【2026年7月】

大規模修繕の「夏工事」で誰が責任を負うのか——熱中症対策が罰則付きで義務化された今、収益物件オーナーと管理組合が知るべき工期・工法の判断軸【2026年7月】

「工事のことは施工会社に任せているのだから、現場の暑さ対策までオーナーが気にする必要はない」——もし、いまお持ちの物件やお住まいのマンションで夏場の大規模修繕を検討していて、そうお考えなら、今日の話は他人事ではありません。2025年6月から、職場の熱中症対策は「罰則付きの義務」になりました。そして、その義務が二度目の夏を迎えるのが、まさにこの2026年の夏です。

私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ってきました。正直に申し上げます。真夏の工事は、職人にとっても、建物にとっても、そして発注者であるオーナーさま・管理組合さまにとっても、一年でいちばんリスクの高い季節です。今日はその理由と、発注者の立場でいま何ができるのかを、現場目線でお話しします。

この夏、工事現場で熱中症が起きたら——まず何が変わったのかを整理する

2025年6月、熱中症対策は「努力目標」から「罰則付きの義務」になった

まず、制度の話から始めます。ここは数字と条文の話なので、少しだけお付き合いください。

2025年6月1日に施行された改正・労働安全衛生規則(ろうどうあんぜんえいせいきそく=働く人の安全と健康を守るための国のルール)によって、一定の暑さの環境で作業する労働者への熱中症予防措置が、事業者(=施工会社)に義務付けられました。対象となるのは、WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上の環境で、連続して1時間を超える作業、または1日の合計が4時間を超える作業です(出典:厚生労働省 職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行))。

WBGTという言葉は聞き慣れないかもしれません。これは気温だけでなく湿度と日射・輻射(ふくしゃ=地面や壁からの照り返し)を加味した「体感に近い暑さの指標」で、屋外の工事現場ではふつうの気温より数度高く出ることも珍しくありません。つまり、天気予報が「31度」でも、足場の中や屋上では体感的にもっと過酷、ということです。

義務化された措置の柱は、大きく二つです。ひとつは、体調異常が起きたときにすぐ報告・対応できる体制の整備。もうひとつは、症状の悪化を防ぐための措置と手順を、あらかじめ定めて現場全員に周知しておくこと。これに違反した場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(出典:同上/keiyaku-watch 労働安全衛生規則改正の解説)。

ここで強調したいのは、これが「気をつけましょう」というスローガンではなく、罰則を伴う法的義務になったという点です。現場の空気は、去年から明らかに変わりました。

数字が語る現実——建設業は熱中症死傷の「最多業種」

制度が厳しくなった背景には、深刻な数字があります。

厚生労働省の確定値によれば、2024年(令和6年)に職場で発生した熱中症による死傷者(死亡または休業4日以上)は1,257人で、統計上の過去最多を更新しました。前年からおよそ14%の増加です。そして、その全体の約4割が建設業と製造業で発生しています(出典:厚生労働省「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」)。

さらに、業種別に2020年からの5年間を合計してみると、建設業が961人と最も多いというデータもあります(出典:同上)。私たちの業界は、残念ながら熱中症災害の「常連」なのです。

戸あたりの感覚に置き換えると、たとえば100戸規模のマンションの大規模修繕には、繁忙期で延べ数百人日の職人が入ります。真夏にその人数が炎天下や足場の中で作業をする——数字を知ったうえで現場を見ると、この季節の工事がいかにギリギリの綱渡りかが分かっていただけると思います。

そしてもう一点、見落とされがちな事実があります。熱中症は「屋外の炎天下」だけで起きるわけではない、ということです。足場にメッシュシートを張った内部、風の抜けない屋上のパラペット(屋上の立ち上がり部分)際、閉め切った地下ピットなど、建物の工事にはむしろ熱がこもりやすい場所が数多くあります。天気予報の気温だけを見て「今日はそこまで暑くないから大丈夫」と判断するのは危険だ、というのが現場の実感です。だからこそ国も、気温ではなくWBGT(暑さ指数)を基準に据えたのだと私は理解しています。

発注者(オーナー・管理組合)は本当に「無関係」なのか

直接の義務は施工会社。だが「時期」と「工期」を握るのは発注者

ここからが本題です。法律上、熱中症対策の直接の義務を負うのは、労働者を雇う施工会社です。オーナーさまや管理組合さまが条文上の義務者になるわけではありません。

ただ、私はいつも理事長さまやオーナーさまにこうお伝えしています。「工事の“時期”と“工期”を最終的に決めているのは、実は発注者側です」と。

総会の日程、住民合意のタイミング、予算年度の都合——さまざまな事情から、「どうしても夏に着工したい」「お盆前に足場を払いたい」という要望が出ます。その気持ちはよく分かります。しかし、無理な工期が現場にしわ寄せされると、いちばん危険なのは職人の身体であり、次に危ういのが工事の品質です。発注者が「安全に無理のないスケジュールか」という視点を持つだけで、現場は大きく変わります。

もうひとつ知っておいていただきたいのは、万が一、現場で重大な事故が起きれば、工事はストップし、原因究明と再発防止で工期は大幅に遅れるということです。結果として、住民の生活影響が長引き、仮設費用がかさむ。安全は「コスト」ではなく、工期と資産を守る「保険」だと、私は考えています。

私が現場で見た「真夏の突貫」の危うさ

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、無理なスケジュールのせいで職人にも建物にも良いことがなかった、というケースに出くわしたときです。

以前、ある築18年のマンションで、総会の関係から「8月中に外壁塗装まで終わらせたい」という強い要望をいただいたことがありました。連日WBGTが高く、午後は作業を中断せざるを得ない日が続きました。工程は詰まり、職人は朝5時台から動く。こういうとき、無理を通せば必ずどこかにひずみが出ます。私はそのとき、理事会に「9月にずらす部位を作りましょう」と提案し、乾燥時間に余裕のいる塗装工程を涼しい時間帯と時期に振り分けました。工期は数日延びましたが、仕上がりと安全は守れた。あのときの判断は、いまでも間違っていなかったと思っています。

逆のケースもあります。あるビルのオーナーさまは、当初「なるべく早く、安く」というご希望でした。しかし現地を一緒に確認しながら、屋上防水は真夏を避けたほうが硬化不良のリスクが小さいこと、外壁の一部はロープアクセスに切り替えれば足場の架設期間そのものを減らせることをご説明したところ、「それなら急いで夏にまとめてやる必要はないね」とご納得いただけました。工期は結果的に短くなり、足場の仮設費も圧縮できた。急がないことが、結果的に安く・安全に・きれいに仕上がる——夏の工事では、この逆説がしばしば成り立ちます。私はいつも、こうした判断材料をできるだけ包み隠さずお伝えするようにしています。

猛暑期の大規模修繕で起きやすい、3つの品質リスク

暑さは職人の身体だけでなく、工事の「質」にも直結します。発注者として知っておくと、施工会社との会話が変わる3点をお話しします。

リスク1:塗装——気温と乾燥時間のミスマッチ

塗料には、それぞれ適した施工温度と乾燥時間があります。真夏は塗膜(とまく=塗った塗料の膜)の表面だけが先に乾き、内部が乾ききらないうちに次の工程へ進んでしまう「早期乾燥」の失敗が起きやすい季節です。表面はきれいでも、数年後に膨れや剥がれとして出てくることがあります。「夏は乾きが速いから工事が早く進む」というのは、必ずしも正しくありません。

リスク2:防水——シート・ウレタンの施工不良

屋上やバルコニーの防水も、暑さに敏感な工事です。ウレタン防水(液体状の防水材を塗り重ねる工法)は高温で硬化が早まりすぎ、シート防水は熱で伸縮します。炎天下の屋上はWBGTが極端に高くなる場所でもあり、職人の消耗と施工品質が同時に問われる、いわば夏工事の「最前線」です。

リスク3:職人の集中力低下がもたらす「見えない手抜き」

これは私がいちばん気にしている点です。暑さで集中力が落ちれば、下地処理の一手間を省いたり、養生(ようじょう=周囲を汚さないための保護)が甘くなったりする。悪意のある手抜きではなく、過酷な環境が生む「無意識のミス」です。だからこそ、職人が無理なく動ける環境をつくることは、発注者にとっても品質を守る話につながるのです。

猛暑の現場で、私たちが実際にやっていること

制度や工法の話が続きましたので、現場で実際にどんな手を打っているのかも、具体的にお話しします。発注者の皆さまが施工会社を見極めるときの「質問のヒント」にもなるはずです。

まず、作業開始前と作業中に、現場でWBGT(暑さ指数)を測ります。数値を「見える化」して職人全員で共有し、基準を超える時間帯は作業内容を入れ替える。炎天下で神経を使う高所作業は午前中の涼しいうちに、比較的軽い準備作業は午後に回す、といった具合です。次に、こまめな休憩と水分・塩分の補給を工程に最初から織り込みます。「時間が押しているから休憩を削る」——この“休めない風潮”こそが、いちばん危ない。私はいつも職長に「工程より人だ」と伝えています。

さらに、単独作業をできるだけ避け、複数人で互いの体調を見合える体制をつくります。熱中症は本人が気づかないうちに進むことがあるためです。ロープアクセスの現場では、そもそも安全管理上つねに複数人で連携して作業しますので、この「相互監視」が自然に働くという利点もあります。

具体的な話をひとつ。ある真夏の外壁補修で、私たちは午後1時から3時の最も暑い2時間を、外壁面での作業ではなく、日陰での準備・段取りの時間にあてる工程を組んだことがあります。一見すると「昼の2時間、外壁を止めるなんて非効率だ」と思われるかもしれません。しかし結果として、熱中症による中断や体調不良がゼロで、手直しもなく、トータルの日数はむしろ当初計画どおりに収まりました。暑い時間に無理に手を動かすより、涼しい時間に集中して進めるほうが、最後まで見れば速くて確実だった——現場でこういう経験を重ねるほど、私は「工程は人の限界に合わせて組む」ことの大切さを実感しています。

こうした一つひとつは地味で、見積書の金額には表れにくい部分です。だからこそ、発注者の皆さまには「安いだけの見積もり」の裏で、こうした安全のための手間がきちんと確保されているかを見ていただきたいのです。過去には、修繕積立金の不足や、施工途中での会社の体力不足が工事の質に影を落とすケースも見てきました(関連する話題は本間社長ブログでも折に触れてお伝えしています)。安さの理由が「安全の削減」であってはいけません。

「足場」と「ロープアクセス」——猛暑期に効く工法の違い

ここで、私たちが3つの工法(通常の足場、無足場のロープアクセス、両者を組み合わせるハイブリッド)を扱う立場から、夏の工事に関わる工法の違いをお話しします。

足場は輻射熱がこもり、工期も長引きやすい

一般的な枠組足場にメッシュシートを張ると、風が通りにくくなり、内部に熱がこもりやすくなります。足場の中の体感温度が外より高くなる、というのは現場ではよく知られた話です。加えて、足場は架設と解体に時間と費用がかかるため、どうしても総工期が長くなり、その分だけ猛暑にさらされる期間も延びます。

ロープアクセス(無足場工法)で酷暑曝露を減らす

一方、ロープアクセス工法(産業用ロープで職人が壁面に直接アクセスして施工する無足場の工法)は、足場の架設・解体が不要なぶん総工期を短縮しやすく、結果として職人が炎天下にいる総時間を圧縮できる可能性があります。開けた空間で作業するため熱がこもりにくく、必要な面だけを機動的に施工できるので、涼しい時間帯に作業を集中させる、といった柔軟な工程も組みやすい。私はこれを、猛暑期の一つの有力な選択肢としてご提案することがあります。

居住者・利用者の生活への影響という点でも、足場を長期間組まないぶん、窓を塞がれる期間が短く、防犯面の不安も小さくできます。詳しくはロープアクセス工法のご紹介もご覧ください。

この「生活・営業を止めない」という利点は、ホテルや商業施設の改修では特に効いてきます。足元では新しいホテルの建設計画があちこちで報じられていますが、一方で、いま稼働している既存のホテルや店舗をどう維持していくかという課題も、同じ重さで存在します。客室の稼働を止めず、宿泊客の目に触れる足場を長期間立てずに外壁や防水を直したい——こうしたご相談は、夏の繁忙期を控えたこの時期に増えます。私は、稼働を止めないことそのものが売上に直結する物件ほど、ロープアクセスやハイブリッドの価値が大きいと感じています。

ただし万能ではない——ロープアクセスが不向きなケース

両論併記で正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません。全面打診(外壁を叩いて浮きを網羅的に調べる作業)や、大量の資材を長期間揚げ下ろしする大規模な改修では、足場のほうが効率的で安全な場合があります。バルコニーの形状や建物の構造によっては、ロープでのアクセスそのものが難しいこともあります。

だからこそ、私はこれを、必ず建物ごとに見極めてご提案するようにしています。「足場だけ」でも「ロープだけ」でもなく、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が最適解になることも少なくありません。足場とロープアクセスの両方を持っている会社だからこそ、涼しい季節に足場工程を、猛暑期にロープ工程を、といった季節を意識した工程設計もできます。総合的なご提案は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。

夏工事という切り口で3工法を並べてみる

工法選びを「夏の工事」という視点で整理すると、それぞれの得手不得手が見えやすくなります。あくまで一般的な傾向であり、実際は建物ごとに判断が必要ですが、比較の入り口としてご覧ください。

観点 通常の足場工法 ロープアクセス(無足場)工法 ハイブリッド工法
猛暑期の熱のこもりやすさ メッシュシート内に熱がこもりやすい 開放空間で熱がこもりにくい 部位により使い分け
総工期の傾向 架設・解体があり長くなりがち 短縮しやすい 中間
炎天下での職人の総曝露時間 長くなりやすい 圧縮しやすい 中間
全面打診・大規模改修への適性 高い 部位により制約あり 高い
居住者の生活影響(窓塞ぎ等) 大きくなりやすい 小さくしやすい 中間
向いている場面 全面改修・大量資材の揚重 部分補修・高層・工期最優先 大規模で総合最適が要るとき

大切なのは、この表のどれか一列が「正解」なのではない、という点です。建物の高さや形状、劣化の範囲、住民の合意状況、そして季節——これらを掛け合わせて初めて、その物件にとっての最適解が決まります。私が「まず現地を見せてください」と申し上げるのは、このためです。

「安全」と「コスト」は対立しない——長期収益で考える

ここまで読んで、「安全を優先すると工期が延びて、費用がかさむのではないか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。その心配は自然なものです。しかし私は、猛暑期の工事に関しては、安全とコストはむしろ同じ方向を向くことが多いと考えています。

理由は三つあります。第一に、事故が起きればその時点で工事は止まり、原因究明・是正・工期延長のすべてがコストとして跳ね返ります。第二に、暑さによる施工不良(塗装の膨れ、防水の硬化不良など)は、数年後の手直し工事という「見えない追加費用」を生みます。表面的に安く早く仕上げたつもりが、次の修繕周期を待たずに再工事、では元も子もありません。第三に、足場の架設期間が長引けば、それ自体が仮設費という日割りのコストになります。工期短縮は、安全であると同時に、費用面でも効いてくるのです。

収益不動産のオーナーさまにとって、修繕は単年度の出費ではなく、長期の資産価値と収益を守るための投資です(工法選択と資産価値の関係については、過去の本間社長ブログ記事でも繰り返しお話ししてきました)。修繕積立金や工事予算は限られています。だからこそ、「その年の総会に間に合わせる」という短期の都合だけで工法や時期を決めるのではなく、10年・20年先の資産価値まで見据えて判断していただきたい。私はいつも、目先の見積金額の大小だけでなく、「この工事が何年もつのか」「次の修繕までの総コストはどうか」という視点をお持ちいただくようお願いしています。建設業経営者の皆さまとの情報交換の場(当社が運営する一般社団法人全国建設業支援協会=JCSAの活動)でも、この「長期で見るコスト」の考え方は、業界全体でもっと共有されるべきだと感じています。

発注者が今夏できる、現実的な5つの備え

では、オーナーさま・管理組合さまが、この夏の工事に向けて具体的に何をすればよいか。押し売りではなく、契約前の整理として役立つ5点を挙げます。

  • 1. 見積・契約段階で「熱中症対策の体制」を確認する:施工会社に、WBGTの測定方法、休憩・給水の計画、異常時の連絡体制を質問してみてください。きちんと答えられる会社は、現場管理の質も高い傾向があります。
  • 2. 工期に「夏の余白」を持たせる:猛暑日は作業中止もあり得ます。最初から余裕のある工程を組んでおけば、無理な突貫を防げます。
  • 3. 乾燥時間の要る工程(塗装・防水)の時期を相談する:真夏を避けられる部位は避ける、という発想を持つだけで品質リスクは下がります。
  • 4. 工法を「足場ありき」で決めない:無足場のロープアクセスやハイブリッドを含め、複数の工法を比較検討する。夏工事では工期短縮が安全にも直結します。
  • 5. 施工写真・報告書での品質確認方法を、着工前に決めておく:無足場工事でも、施工写真と施工報告書で仕上がりを確認できます(ご希望に応じて動画記録も可能です)。「どう確認するか」を先に握っておくと安心です。

これらは、どの工法・どの会社で工事をする場合でも役に立つチェックポイントです。私は、相談だけでもこうした整理のお手伝いができればと思っています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 発注者(管理組合・オーナー)が、施工会社の熱中症対策違反で罰せられることはありますか?
A. 労働安全衛生規則上の義務者は、労働者を雇う施工会社です。発注者が同条文で直接罰せられるわけではありません。ただし、無理な工期を求めた結果として事故や品質不良が起きれば、工期遅延や追加費用という形で発注者側にも影響が及びます。安全に無理のないスケジュールかどうかを確認することが、結果的にご自身の資産を守ることにつながります。

Q. 夏に工事をするのは避けたほうがよいのでしょうか?
A. 一概に避けるべき、とは申し上げません。適切な工程管理と工法選択をすれば、夏でも品質の高い工事は可能です。大切なのは、乾燥時間の要る工程の時期を調整し、工期に余白を持たせ、職人が無理なく動ける環境を確保することです。

Q. ロープアクセスなら熱中症のリスクはゼロになりますか?
A. いいえ、ゼロにはなりません。屋外作業である以上、暑さのリスクは残ります。ただし、足場内に熱がこもりにくいことや、総工期を短縮して炎天下の総時間を減らせる可能性があることは、猛暑期の一つの利点だと考えています。建物ごとに最適な工法は異なりますので、比較のうえで判断することをおすすめします。

Q. 安全対策をしっかりやる会社は、やはり工事費が高くなるのでしょうか?
A. 一概にそうとは言えません。確かに、休憩や測定、複数人での体制づくりには手間がかかります。しかし前段でお話ししたとおり、事故や施工不良による手直し、足場の長期化による仮設費を避けられれば、トータルの費用はむしろ抑えられることが少なくありません。見積書の総額だけでなく、「その金額で何年もつのか」「安全と品質の裏づけがあるか」まで含めて比較していただくのが、結局はいちばん損のない選び方だと私は考えています。

Q. まだ工事の時期も決めていない段階でも、相談してよいものでしょうか?
A. もちろんです。むしろ、時期や工法を決める前の段階でご相談いただくほうが、選択肢を広くお示しできます。私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法を建物に合わせてご提案できる数少ない会社です。現地を拝見したうえで、夏を避けるべき工程、無足場に切り替えられる部位などを、フラットにお伝えします。

むすびに

熱中症対策の義務化は、職人を守るためのルールです。しかし私は、それが同時に、発注者であるオーナーさま・管理組合さまの資産と工事品質を守るルールでもあると考えています。無理のない時期に、無理のない工期で、建物に合った工法で——この当たり前を積み重ねることが、猛暑の時代の大規模修繕では何より効きます。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。夏の工事の進め方や工法の比較で迷ったら、お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や着工の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料